この作品もコーエン節がよく効いたアメリカ文学的物語性に富んだ小気味の良い作品です。シリアスなのかコミカルなのかまじめに見ていいのかドキドキしていいのかふんつまんねと思いながら見るのか、そんなことはコーエン作品の前では何も意味をなしません。ストーリーが進行するそのストーリーこそが主人公なのであり、物語はただそこにある通りに進むのです。観客は物語に翻弄され、ただ単ににやりとしたりあっけにとられたり驚いたりするだけです。人を食った話なのです。そこがコーエン兄弟のドライな魅力だと思います。
本作もそんなドライな空気に満ちています。音楽もまたいい。
2006.05.10
お話はインテリ泥棒団が頑固者の婆さんに翻弄される犯罪映画。地下金庫の現金をいただくための犯罪拠点として老婦人宅の地下室を利用するわけですが、上手な嘘で地下室を借りたのはいいものの、完璧な犯罪計画は頑固婆さんのせいで僅かにほころびはじめます。
「レディキラーズ」は1955年の「マダムと泥棒」をコーエン兄弟がリメイクした作品で、オリジナルは未見ですが、転がるような展開と、泥棒と老婦人の面白怖い関係なんかがオリジナル風味としてコーエン兄弟テイストによく合ってるんじゃないだろうかと思えます。