邦題についてですが、DVD化の際にオリジナルと同じ「テシス」になりました。これまでは「殺人論文/次に私が殺される」とか「テシス/次に私が殺される」といったタイトルがつけられていたそうです。「テシス」とは「論文」ですね。シンプルなタイトルです。
日本ではちゃんと紹介されていなかったようですが、本国スペインでは興行成績を塗り替える大ヒットとなり、ゴヤ賞でも7部門受賞、23歳の若きアレハンドロ・アメナーバルの才能を世に知らしめました。
そして何より本作の注目は主演のアナ・トレントです。
そうです1973年「ミツバチのささやき」のアナです。
超個人的な思い出話で恐縮ですが、この「ミツバチのささやき」は公開中(日本公開は85年)に劇場に通って観た回数ナンバーワン記録を保持している「人生に重大な意味を与えた映画」の中のひとつです。そして単純に、幼いアナ・トレントの神々しいまでの可愛らしさの崇拝者でありまして、もはや彼女はスクリーンの、しかも「ミツバチのささやき」だけに存在する時間と宇宙を超越した偏在神です。だからビデオで「テシス」が出たときも、女優アナ・トレントなどは別に見たくもないわと、まあ失礼千万でありますが、そんな感覚でもって、出演している他の作品に触れたくない見たくもない、と無視しておりました。
もはやここまでくればファンとは呼べず、変態またはストーカーあるいはミザリー状態です。ひどいですね。
こんなことではいけません。
そしてアレハンドロ・アメナーバルの他の作品を観てあまりの出来の良さに「君天才っ君最高っ」ってはしゃいでいた時期だったこともあり、彼の23歳のデビュー作であり、且つアナ・トレントが出演しているという「テシス」を観ておかねば、いや寧ろ観させてくださいという気持ちでDVDを手に取ったのがあれ?もう2年以上前か。MovieBooにポストするのを忘れてた模様です。
さて、個人的な思いの話はどうでもいいとして「テシス」ですが、これはスリラーです。
アナ・トレントが演じる主人公の学生は、卒業論文のテーマに「映像における暴力」を選びまして、その資料として残酷なビデオを見たいと所望、ビデオコレクターの青年を紹介されて見たビデオの中でも最強烈なものは若い娘の虐殺ビデオ。
そう。スナッフです。ビデオ、スナッフ、そしてPOV的なものを取り入れた、なかなか先駆け的な作品かもしれません。
残虐思考と恐怖です。主人公の女学生が恐怖の渦中に放り込まれます。
怖くて怪しいストーリーは二転三転、目が離せません。
今の時代に見ると、スリラー映画に慣れた人なんかはもしかしたらもっと強烈なものを求めて「普通だな」なんて思うかもしれませんが、いえいえ、映画全体を包む雰囲気もいいし、今見ても十分一級品ですよ。
23歳の監督は脚本も音楽もやっております。これは確かにものすごい才能。
君天才っ君最高っ、って言いたくなること請け合いです。
この監督作品は他に「オープン・ユア・アイズ」「アザーズ」「海を飛ぶ夢」「アレクサンドリア」と、どれもこれも外れなしの傑作ばかり。ファンの人も多いと思います。あまり見ていない人は是非どうぞ。マニア目線ではなく、普通に傑作揃いの才人です。
主演の女学生役アナ・トレントについてはまあさほどでもないです。ただしこれは「ミツバチフィルター」に犯された私の腐った目で見た感想だから信憑性はありません。
というわけでアレハンドロ・アメナーバル監督の鮮烈デビュー作「テシス」でした。
最近の更新は数年前に見た映画ばかりで記憶もあやふや、大した記事が書けなくてすいません。
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