いやあ文通っていいですね。メールのやりとりと違って距離感を感じ、親密感が倍増します。
「メアリー&マックス」は女の子とおじさんの文通物語で、どちらも何かしら極端な環境下にある人物です。アニメーションならではのデフォルメがこうした設定にも効いておりまして、実写では説得力とリアリティを持たせられない極端な世界観での極端な人物像の造型に寄与しています。
その中で「文通」という前時代的であるけれど文化レベルの高い交流技法を軸に、都市生活者のそれぞれの孤独と生活、愛情とセラピー的役割を描きます。
デフォルメしているとは言え、女の子の境遇やおじさんの精神状態に関してきちっとした知識の上に成り立つ脚本でして、そこに出鱈目さや薄っぺらさはありません。これは正統派サイコラブリー物語です。
随所に見られるブラックネタはほどよく抑制が効いていて厭らしくないレベルの大衆性を守っています。そのためマニアックで排他的なイメージは全くありません。
決して健康優良ほのぼのアニメなんかではありませんが、そのさじ加減は絶妙です。
このちょうど良いバランスの物語、基になったのはオーストラリア人監督アダム・エリオットの実体験だそうです。
ニューヨークに暮らすアスペスガー症候群の男性との20年にわたる文通の体験。「メアリー&マックス」の根底にある強烈な説得力はこの長年にわたる文通体験あればこそであり、まさに映画化決定っ。であります。
オープニングの音楽はペンギン・カフェ・オーケストラ。懐かしー。素晴らしい音楽でございます。
キャラクター造型、ストーリー、ブラックネタ、フィリップ・シーモア・ホフマンなどの大物俳優による声の出演、孤独と友情、成長と崩壊、笑いと泣き、いいですね。見る価値大いにありです。