「麻酔が効かないケースがある」ということをことさら強調しまくって映画は始まりますが、なぜこんな強調を冒頭に持ってきたのか意図が理解できぬまま物語は始まります。
若き資産家は桁外れの大金持ちで心臓が悪く母親に頭が上がらず階層違いの恋人を隠しています。こういうドラマ部分が序盤から展開されるのに、冒頭の宣言のせいで「手術シーンはまだか」などと思ってしまいます。
いえね、いいアイデアですよ。意識があるまま手術されるっていう。
ミステリー的なる展開も悪くないです。基本的に面白いです。
ただ、残念ながらワン・アイデア物から脱しきれませんでした。多分、脚本的には「麻酔が効かない手術」というテーマから如何にお話を作っていくかという点であれこれ考えあぐねた結果だろうと思いますが、わずかな部分が説得力を伴わず、そのわずかな部分のために映画全体の説得力を失わせてしまいました。
決して出来の悪い映画じゃないのに、基本的な設定に底の浅さが目立つため、肝心の面白い部分を削り取ってしまっています。たいへん残念です。「つっこみどころ満載」君がつっこむのも馬鹿らしくなるだろうと思えるその「わずかな底の浅い基本設定」というのは、主人公の金持ち具合です。
「ニューヨークの土地の半分」を持ち「日本企業と取引き」をし、有名で大金持ちで資産家で若くハンサムです。どこのロックフェラーさんですかと。貧弱な空想力の若造が漠然と大金持ちをイメージしたかのような、そんな大金持ちです。その彼がですよ、普通の女性と恋に落ち、心臓が悪くて移植待ちで、庶民の病院の医者と友達になり、手術をします。これはいくら何でも無理しすぎ。
ストーリー的には、そこまでロスチャイルドほどの大金持ちでなくても、ふつうの金持ちで十分だったはずです。どうしてここまで徹底した巨大資本の人間という設定にしたのかさっぱりわかりません。
まあそんなわけで、巨大資本に目をつぶりますと、そこそこ面白く、そして意識があるまま手術されるシーンの迫力はとてもいい感じです。さすが、この部分から映画の企画が始まっただけのことはあります(←勝手に決めつけてるし)
で、で、それでですね、その後がですね、これがまた、なんというか、おもしろ展開というか、少々やっちまったというか、妙なことになってきます。
これもですね、それはそれで面白い展開なのですが、この展開のせいでですね、せっかくの「麻酔効かずの手術」という部分がどうでもよくなってくるというか、オカルト的というか、まあそのう。なんというか。真面目なのにお馬鹿というか。
なんかケチつけてるみたいな感想文になってきましたが、実は見ている間は面白いんですよ。全然悪くないし、ジェシカ・アルバかわいいし、後半の展開も楽しめます。
「アウェイク」は面白くてケチをつけたくなる、褒めながら貶したくなる、なんじゃこれと呆れながらも楽しめる、そんな不思議な映画です。いやほんと。
基本的には若い子向けの映画です。医療関係の映画ではありません。