イギリスで制作されたこのドキュメンタリー、題材は老人によるコーラスグループです。その名もヤング@ハート。
ヤング@ハートは米国マサチューセッツ州で1982年に結成されたグループで、音楽監督と指揮を担当するボブ・シルマンが公営住宅に住む高齢者を集めてロックやR&Bを歌うというコンセプトで始められたそうです。
老人たちによるハイカラ音楽の楽しいコーラスグループの歌とドラマ。これは楽しいです。
老人たちのノリノリ音楽という点でもしかしたら被るかもしれない「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」とは全く異なります。
「ブエナ・ビスタ」は元第一線で活躍していたプロ中のプロ、こちら「ヤング@ハート」は歌が好きな単なるお年寄りを鍛えまくって何とか歌わせるという、そんな案配です。もちろん、中にはすごく上手いスター・プレーヤーもおられます。
彼らの練習風景、指揮を取るボブ・シルマン、団員たちのインタビューやコンサート風景を取り混ぜたど根性音楽ドキュメンタリーが展開されます。
歌われる曲はクラッシュ、ソニック・ユース、ジェームス・ブラウン、ジミヘンにトーキング・ヘッズにボブ・ディランと幅広いもの。
元気なお年寄りのパンクやR&Bを見ていると思わずにんまりしてしまいます。
もともとはイギリスのデジタル・チャンネルのために作られた50分のドキュメンタリー番組だったそうで、その後再編集して劇場公開映画となりました。
インタビューや練習風景はいわゆるテレビ的な演出と画質です。
もともと映像に期待するタイプの映画でない筈なのですが、これが実は意外なことに映像がすごくいい部分があります。
ミュージックビデオのようなクリップが随所に挿入されていて、これが凄く綺麗。そういうパッと見て判る美しい映像もあり、そしてそれ以外の普通のインタビューシーンなどもこれが実に撮影センスのよい構図のカッコいい映像となっています。この映像や構図のカッコ良さは隠れた見どころと言っていいでしょう。
刑務所慰問ライブや病に倒れる団員、どうしてもリズムに乗れないおっちゃんの特訓、人生の説得力に満ちた老人たちによる涙と笑いの音楽映画です。
最後のコンサートでの盛り上がりは「ストップ・メイキング・センス」に迫りますよ。