ギターを抱えてメキシコの小さな町にやってきたマリアッチ。「仕事ありませんか」「歌いますよ」とバーを巡っている調度その頃、刑務所を脱獄したギャングのボスが、かつての裏切り者一派に復讐の猛攻撃をかけておる最中でして、このギャングのボスがマシンガンを黒いギターケースに入れて持ち歩いてるんですね。裏切り者は「返り討ちにしてくれよう」と黒いギターケースの男を手下に捜させます。
のんきなマリアッチはそんなことも知らず黒いギターケースを抱えて営業周り。案の定勘違いされて殺し屋に狙われる羽目になります。
と、そんなお話でして、想像するだけでしっちゃかめっちゃかになってくることが伺えましょう。
この正統派しっちゃかめっちゃか物語を、小気味よくさくさくと描ききる若きロバート・ロドリゲス監督です。メキシコの田舎町、バーやホテル、乾いた景色とクールな筋立て、B級テイストとスピード感、唄と暴力と活劇がぴったりフィットのそれはそれは完璧な仕上がりとなっておりまして、当時はさぞかし「天才監督現る」と大騒ぎになったことでありましょう。
「エル・マリアッチ」の大成功によって、後にマリアッチシリーズが生まれました。アントニオ・バンデラスを主役に用いた本気のメキシカンアクションシリーズとして成功した2作品、「デスペラード」と「レジェンド・オブ・メキシコ」は誰もが知るメジャー作品ですね。
しかし私は個人的にこの「エル・マリアッチ」のほうが何倍も面白い。狭い世界の空気感やおとぼけ具合、妙な振る舞いや生き生きした撮影の勢いなどが詰まっています。数々のアイデアを凝らした若さ溢れる作品です。
絡み合うストーリー、素朴な味わい、会話の妙、この映画の魅力は筆舌に尽くしがたい。
DVDで今この作品を観ると特典としてもれなく監督の「映画講座」や短編映画が収録されています。これは見る価値あり。撮って撮って撮りまくって学んでいった乱作時代の話やアイデアと工夫で作り上げる映画の醍醐味の話をしていただけます。見ているだけで力がみなぎり、よしおれも撮ってみようって気にさせます。
短編映画も素晴らしい。家族総出のちびっ子編なんかもう面白すぎてぶっ倒れます。
「フロム・ダスク・ティル・ドーン」や「プラネット・テラー」そして「マチェーテ」の系統であるロバート・ロドリゲスの原点にして最高の傑作、オマケも充実、こいつぁお得、一家に一本!
追記。
いやはや褒めちぎっておりますが、好きな人にはいいですがこの手の映画を苦手な人にはごめんなさい。撮影前から注目しまくっていた癖に公開時に劇場に行けなかったというファン失格の「マチェーテ」に関してはまた今度。手元にあるのになかなか観れません。
で、やっと観ましたんで。こちら、マチェーテ。