語呂も字面もやる気のない邦題をつけられたこの「dot the i」という映画はサンダンス映画祭で上映され絶賛された妙な映画です。
こういう、ストーリーや設定の紹介がし辛く、ジャンルをまたぐような一言で説明できないタイプの映画ってのは宣伝に苦労するんでしょうね。
結婚が決まっている美女カルメン(ナタリア・ベルベケ)がパーティの余興で偶然居合わせた青年キット(ガエル・ガルシア・ベルナル)とキスをすることになり、その瞬間から危険な三角関係が始まります。
カルメンの婚約者は金持ちで優しい男バーナビー(ジェームズ・ダーシー)で、彼らの婚約に至る経緯も丁寧に描写します。
キットはアパート暮らしの貧乏兄ちゃんで、アルバイトの面接に行ったり昼間にぶらぶらする刹那的な生き方が描かれます。
この三人の三角関係だけの物語なら、ちょっとしたラブ系スリラーとして普通なんですがどういうわけか始終「もう一つの視点」ってのが出てくるから目が離せない。ことあるごとに、どこからか覗き見しているような第三者の視点が画面に登場します。
ずっと漠然とした謎を抱えたままストーリーが展開し、後半になるにしたがってどんどんサスペンスとしての面白みが増してきます。
カルメンを演じるナタリア・ベルベケは大層魅力的。あるべきシーンでの露出が少なく「この人、アイドルか何かで脱ぎ制限でもあるのか」といぶかってしまうのですがまあそれはいいか。
金持ちの婚約者を演じるジェームズ・ダーシーの演技が大したものです。金持ちの役なのに厭味がなく、優しさや気の弱さやあれやこれやの心の有り様を観るものにしっかりと伝えます。この人の演技に説得力があるからこそ成り立つ部分ってのが如何に大きいか、最後まで観ると思い知りますね。
ガエル・ガルシア・ベルナルはこの時期「天国の口、終わりの楽園」の人気をまだしっかりと引きずっており、金持ちの婚約者がいるにもかかわらずこういう男に惹かれていく設定も自然に受け入れられます。
虚構に翻弄されたいタイプの人向けの一風変わったサスペンス的映画。
2009.06.09
他の出演者はトム・ハーディとチャーリー・コックスのクレジットがありますね。トム・ハーディは最近「インセプション」でイームス役をやっていた人です。柔い兄ちゃんもすっかり逞しい大人になりました。
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