では御免、ではさみしいので個人的なお話を書かせていただきますれば、そもそも私、この映画のアメリカリメイク「荒野の七人」の虜でございまして、そう、ユル・ブリンナー、スティーブ・マックイーン、チャールズ・ブロンソン、ジェームズ・コバーンなど蒼々たるメンバーですね、有名なサウンドトラックと共に、個性的な面々が弱きものを助けるため命を張るあの格好良さにもう少年の私はメロメロでした。
もちろん世代的にテレビの洋画劇場などで拝見しただけであります。10年以上経っていてもまだ「荒野の七人」のスターたちは十分現役スターでありまして、時期的には「ゲッタウェイ」「パピヨン」「タワーリング・インフェルノ」などを二番館で観る頃のことであります。あるいはまた「う〜ん。マンダム」の頃でもあります。またあるいはブルース・リーが「あちょー」ってやってる頃でもあります。
いやそんなことはどうでもよくて、 つまり個人史的にその頃は「ドラキュラ」好きの次の段階として映画そのものへ大きく傾倒していった頃でございまして、その分脳味噌に食い込んだ力がかなり大きいものであったという説明であります。
さて「荒野の七人」に惚れ込んでいたとすれば当然オリジナルの「七人の侍」が観たくて観たくて仕方ないのであります。
が、当時はもちろんビデオ機器なるものもございませんから、名画座でかかるのを待つかテレビに期待するしかありません。
そしてテレビが期待に応えてくれるのにそう時間はかかりませんでした。
やっとのことでこの「七人の侍」をテレビで観たときは、あろうことか馬鹿餓鬼といいましょうか愚鈍なチビ助といいましょうか、「面白かったけど荒野の七人のほうがテキパキしてて面白いな」と、ああもう恥ずかしい、そのような感想を持ったのでございます。今にして思えば、荒野の七人に惚れ込みすぎていることと、餓鬼だから時間の経ち方が大人と違い、じっくり腰を据えた見方ができなかったんですね。愚かなことです。
それから長い年月が経ち、ビデオ機器なるものが一般庶民にも手に入るような現代社会になったころに、再びリベンジして鑑賞いたしました。
今度はさすがに印象ががらりと変わりました。面白すぎて大興奮です。「ここここんなに面白かったとは。どこがどう間延びしていたと思っていたのだろう餓鬼の俺。馬鹿馬鹿バカ」と、まあ当たり前ですね。
ビデオ機器とレンタルビデオの普及のおかげで観たかった古い映画に触れることが出来たのはまことありがたいことでした。
さらにそれから長い年月が経ち、21世紀の暗い未来社会に入ってすでに何年も経過したころ、映画漬けの我が家にてある日ぼそっと「黒沢映画観たことない」との奥様の発言がありました。世代的にオリーブ少女的に、小津安二郎は観ていても黒沢明を観ていないんですね。「なに。それはいかん。すぐに観なければ」ということで、久しぶりに観ることになりました。
結果は流石我が家の奥様でございます。大興奮の好感触。
「たまらん。もう、たまらん」と、娯楽アクション大作の神髄に触れて大はしゃぎです。やはり面白い映画はいつ誰が見ても面白い。
仲間モノ、か弱きものとの関わりモノ、闘いモノ、人の心を揺り動かす娯楽作品のすべての基本がここにあります。
歴史的名画の威力というのはすごいものでございますね。
first appearance 2009.02.22