ジャン=ピエール・ジュネとコンビを組んで「デリカテッセン」「ロスト・チルドレン」という歴史的名作を残したマルク・キャロ。この2作以前にも「ジュネ&キャロ」で短編映画などを作っていました。言わば集大成だったのでしょう。この人の映像センスなしにジュネの成長はなかったのではないかと思っています。
「エイリアン4」の途中で別れて以来、コンビ解消となりました。恨むぜ「エイリアン4」。でも考えてみれば、たとえ「エイリアン4」がなくても、この二人のコンビは解消へ向かっていたのだと思います。ずっと一緒に仕事はできません。二人はそれぞれ旅立つ宿命だったのです。
さて脚光を浴びて巨匠の域に上り詰めたジュネに対して、マルク・キャロは不遇と言えると思います。2008年の本作「ダンテ01」まで監督作品はありませんでした。
圧倒的な映像センスで「キャロ節」を作り上げた才能の割には、96年「リサ」(出演)と2001年「ヴィドック」(デザイン)くらいしか知られていないとは不思議です。
さて、1979年のセザール賞受賞作品、ジュネ&キャロ「回転木馬」から時は過ぎ、2008年の初監督作品「ダンテ01」です。
・・・・・遅すぎました。何もかも。
「ダンテ01」、美術は相変わらずです。素晴らしいとまでは言いませんが、往年のキャロ節は健在。しかし健在すぎて今や新しさはありません。そこが辛いです。もしキャロが売れっ子になってバンバン仕事をし続けていたら、一歩も二歩も先へ進んでいたことでしょう。
キャロ節のカメラワークに乗ってドミニク・ピノンさんが登場します。いい役者さんです。彼の姿を見てほっとしました。
この映画を観てはっきり判ったことは、キャロはアーティストであって、物語を作ったり、登場人物に魂を与えたり、監督して作品をまとめ上げる才能がないということです。
か、悲しすぎる結論に涙。
登場人物は生きていませんし、設定は設定倒れだし、物語はきちんと描けないし、良いアイデアをシナリオに落とし込むことに失敗しているし、どのシーンもうんうん呻ってるだけの抑揚のない演出だし、最後に至っては劣化「2001年宇宙の旅」丸出しの古くさい演出です。泣けてきます。
キャロはアートやデザインの人です。
ジュネは人物造形や ストーリーテラーの人です。
二人のコンビは素晴らしい映画を作り上げました。
ジュネはキャロの才能を吸収しました。
キャロはジュネの才能を吸収できませんでした。
もう脚本とか書かなくていいから、誰かの書いた素晴らしい脚本や誰かの素晴らしい演出のもとでアートの才能を発揮させてください。
お願いします。
それから、この貴重な作品をDVDで配給してくれた配給会社に感謝。
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