ダルデンヌ兄弟による渾身の一作。
真っ当な仕事をして真っ当に暮らしたいことだけを夢見る少女ロゼッタの日常を淡々と描きます。間近からのカメラがロゼッタを追い続け、彼女の生態を観察します。ロゼッタの動物性は貧困のなせる業でしょう。ただただ生きています。彼女の行動を追うカメラに映し出されるのは人間の少女でしょうか。野良犬でしょうか。
「仕事さえあれば人間らしい暮らしができる」と確信してロゼッタが取る行動に批判は許されません。判断力のなさを指摘することも許されません。ロゼッタの生きる力は生への渇望でも生命力の強さでもありません。生きているから仕方なく生き続けなければならないというまさに野生動物のそれと同じように思われます。
しかし人間らしい感情を抑えきれなくなってきたあたりから辛さが生半可じゃなくなります。
この映画の凄まじさはロゼッタの痛みと声なき叫びを画面を通して強烈に表現しているところにあります。ただの貧困をテーマにした社会派映画ではありません。少女の孤独は見る者の心に突き刺さり血が吹き出るほどの痛みをもたらすでしょう。
この大傑作に迂闊に触れると怪我するぜ。十分な大人になってからの鑑賞をお勧めします。
99年、カンヌ国際映画祭にてパルムドールと主演女優賞。
2008.08.26
これは凄い作品ですよ凄すぎます
“ロゼッタ” への1件の返信