困ったちゃんエリートの遊びとお仕事です。一見印象に残りにくそうな映画ですけど意外なことに良作。意外とか言っちゃ失礼ですけど、意外だったんだもん。これ結構好き。
主演のパトリック・ウィルソンは最近もっぱらホラー界隈で大きなシリーズものに二本も主演しているという売れに売れている俳優ですが、最初に印象に残ったのは「ハード・キャンディ」なんです。
「ハード・キャンディ」ではロリコン犯罪者[かもしれない]カメラマン役で、エレン・ペイジにコテンパンにやられていました。優しそうでもあり、優柔不断そうでもあり、男前っぽくもあり、でもスケベっぽくもあって、さらに変質者っぽいものを秘めているかもしれないという、実に何とでも転ぶことが可能な独特の風貌と雰囲気を持っていて映画的にも最大限の効果を上げていましたね。つかみどころのないのほほんとした感じをお持ちの俳優です。
「ZIPPER」ではそんな多面的に怪しい「ハード・キャンディ」的なパトリック・ウィルソン節が久々に全開するお話です。
エリート検察官なんです。次は議員に立候補しようかという、そういう男です。偽りなく本当に真面目な男で、可愛子ちゃんに誘惑されてもギリギリなびかない人なんですね。
でも可愛子ちゃんに誘惑されて平気なわけありませんで、そこは健康な男として性欲の虜となります。ネットでいかがわしいのを見て回ったり、職場で聞きかじったエリート専用コールガールの登録画面でじーっと悩んだりして、結果、ついにたまりかねて電話を掛けてしまうんですねえ。たまりすぎてかな(笑)
真面目すぎて若い頃遊んでいないという設定がじわじわ効いてきます。遊びを知らぬ男が歳取ってから遊びを知ると猿のように嵌まってしまうぞという話は古今東西の言い伝え通り事実であります。多分。
嫁はんがいるんですが、学生時代から付き合っていて早くに結婚したという設定がすーっと入ってきます。ただの嫁はんじゃありません。親が大金持ちで政界司法界にコネがありまくりで、そもそも主人公を影で操りコネを駆使して出世させまくる影のボスがこの嫁はんなんですね。
わかりますかみなさん。こういう環境を羨ましいと思う人もいるでしょうが現実だったら大変ですよ。
若いうちはいいかもしれません。しかし仕事に乗ってきてややおじさんの年齢に差し掛かり自信を持ち始めたそのころ、端的に言えばモテ期ですわな、この時、家庭も仕事も出世もコネもすべて嫁さんに握られている男の哀れたるやまるでパトリック・ウィルソンの顔そのものです。
この映画は極端ですが、でも例えばですね、いると思いますよ。奥さんの親が建てた二世帯住宅に住み奥さんの父親が経営する会社に勤めてるようなひと。逃げ出したくなったり浮気の一つや二つしたくもなるんじゃないでしょうか。でも絶対にできませんね、すぐバレますね、どうなりますか人生。私にはわからないことですが。知りませんけど。
というそんな主人公、でも奥さんのことも愛しているしアホではないので愛人作ったり妙なところで羽目を外すんではなくて、ちゃんとエリート専用の高級エスコート嬢の会員コースで遊びます。偉いじゃないですか。分別あります。しかし何かやたらとわし主人公に同情的やな。
ただ主人公は遊びを知らずに大人になっただけあって、コールガールの遊びにのめり込みすぎてしまいます。寝ても覚めてもそのことばかりみたいな状況になって、まるでパトリック・ウィルソンみたいな状態です。
仕舞いには肋骨折れて鼻血が出ているのに這ってでも予約のホテルに行こうとする執念まで発揮。素晴らしいです。
さて、そんなこんなで邦題の「エリートが堕ちた罠」みたいなことにだんだんなってきて、もうドキドキしっぱなしなことになります。当然そうなりますね。ただでは済みません。ヤバいです。映画に向かって「気をつけろー」と言ってあげたい。
で、ですね。
この映画が気に入ったほんとの理由は終盤からオチにかけての展開にあるんです。なんとこの映画はみんなが想像する展開のそのまた先があるんです。そこが現代的、それがモダン、同じ意味やがな。
ただ真面目な男がヤバい遊びにのめり込んで、だんだんバレてきて身を滅ぼすか!というストーリーのその先にあるのは何と
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