ブルー・リベンジ

Blue Ruin
ありそうでなかった斬新特殊な切り口のバイオレンス映画「ブルー・リベンジ」を観た後は、新しさとは何か恐怖とは何か才能とは何かそして友達って何だろうとあれこれ渦巻いて予期せず良い映画観た心底いいの観たほんと良かったとわりと絶賛。
ブルー・リベンジ

というのも、あまりバイオレンス映画って観ていないわけです。詳しくもないし知りません。知らないことは強みです。知らないことに限って知ったような気になります。

これは公開中にとても観たかったやつです。なんかわかりませんがやけに良さそうな映画と思えてなりませんでした。公開後は忘れていて、ふと思い出したらDVDも出てたのでラッキーって手に入れて観ます。
それで、メタクソおもろい「ブルー・リベンジ」を見終えて「うむ。このような新しい切り口のバイオレンス映画はかつてなかった。これはすごいの観た」と大興奮しながら「あほ。バイオレンス映画ほとんど知らんくせにわかったようなことほざくな」と脳の片側から冷静な声も聞こえます。

お話はこうです。復讐というものが絡んだある男の物語です。
最初はホームレスですが復讐の相手が司法取引して出所するという話を聞き、ゆるゆると準備しはじめ、復讐に向かうのです。

どうです。どこが斬新なのかさっぱりわからないでしょう。

序盤のホームレスのシーンから特徴が現れています。ホームレスの男はこっそり力をため込んでいるというか準備らしきことはしています。していますが、マンガや任侠ものみたいに、孤独で強くてかっこいいみたいな復讐男では全然ないわけです。髭ぼーぼーでカッコ良く見えるのは見えるんですが、何だかちょっとおどおどしています。
ずっと後に髪を切り髭を剃るわけですが、そこから出てきたのは想像していた顔つきとはまるで違う穏やかで弱そうな男なのですよ。髭ってすごいすよね、変装する人がまず髭からやるのもうなずけます。

そんなわけで穏やかそうな気の弱そうな復讐の鬼の主人公、メイコン・ブレアが演じています。メイコン・ブレアって誰でしょう。後にわかりますが今は知らない俳優さんです。
カバーアートの髭面では、かっこいい男に見えますが、メイコン・ブレアはこんな感じのひとです。
髭面のクールな男にも穏やかな人にもなれる俳優ですね。この人の起用がとても効いていると思います。

復讐のバイオレンス映画ですけど、主人公は復讐の原因となったある事件によって完全に精神が弱っているわけです。PTSDです。なのに復讐に燃えています。いや、実際は燃えてなんぞおりません。でもなんかやる方向です。自暴自棄の一種とも取れるし、何かしらけりをつけるためか、なんかこう、見ていて落ち着かないのですが、それはこの男が普通の人間だからです。映画はこの男の普通の人である部分を生々しく描いて、その分復讐や暴力の恐怖を盛り上げます。決してリアルな話ではないんですが、精神的にはとてもリアルなバイオレンス映画となっています。普通の人にとって暴力が如何に怖いか、それをすごく上手に作品化出来てますよ。

人はときどき悪夢というものを見ます。私も見ます。そして希にバイオレンスな悪夢を見るんですが、その恐ろしさたるや凄まじいわけです。大体において夢の中では感情が増幅されます。面白い夢は笑い転げるほど面白いし、エロティックな夢は現実にはあり得ないほど官能的だし、そして恐怖の夢は生きるのが苦しいほどに怖いものです。私は「ブルー・リベンジ」を観ながら、バイオレンス悪夢をどうしても連想してしまうのでした。まさにその恐怖は悪夢のようだ、です。真の恐怖は想像の中にあります。

映画がもたらすこの恐怖が普遍的なものかどうかちょっとわかりません。これ観ても別に怖くないじゃんと思う人もいると思いします。でもやっぱある程度普遍性があるんじゃないでしょうか。「ブルー・リベンジ」は各方面からも絶賛されたようですし、そういう普遍性をきっちり描いてます。恐怖と絶望が支配するバイオレンス映画という目の付け所はほんとによくできてると思います。こんな切り口の映画はちょっとかつてなかった・・・かどうかは知りませんけど。

普通の人間が感じる暴力の恐怖だけでなく、物語的にとても面白いものも描いています。
途中、ある殺しのシーンがあります。もうドキドキのシーンなんですけど、このシーンのですね、あの男がですね、つまりあの彼じゃなくてあの男のほうね、こういうの具体的に示さず説明するのって無理ありますが、あの男の殺意について考えてみましょう。私の考えなんですが、あの男に殺意はなかったと思います。殺意しかないような男がですね、殺意なんてなかったんではないかと、そう思わせるアレです。なのになぜあれほど恐ろしいか。これも悪夢と同じです。あの男の殺意を想像することが最も恐ろしいことなのです。その恐怖が最高潮に達するとき、どうしましたか。どうなりましたか。
非常に深いです。ここにあるのは恐怖と絶望、破滅です。

まだあります。痛みです。バイオレンスやアクション映画ってのは登場人物があまりにも痛みに強いですね、嘘くささのひとつで、だからこそ娯楽映画が成立するんですが、こっちの彼の痛みはやっぱりリアルに引き摺る痛みです。ほんというとリアリティとは少し違うリアリティなんですが、そんなところをやけにリアルに描ききるというその姿勢はわりと貫かれていて、これがたまらんのです。

ほんとこれ凄い映画でした。力入ってます。
監督のジェレミー・ソルニエは撮影の人ですが脚本も監督もずば抜けた才能でやってのけました。というかヤケクソですか。これ、もしかしてこの痛み、恐怖、絶望、破滅というこの映画、監督の心情や状況とシンクロしてませんか。何か心配ですが、監督だいじょうぶかー。

というわけで、はあはあぜいぜい言いながら映画を見終えてエンドクレジットをたらたら眺めていたらですね、ある人の名前を発見して「えっ」となったという話に続きます。

映画をよく観てると見聞きしたことがある名前がクレジットされてるというのは珍しくないんですが、その名前によっては驚くんです。つまりそれは誰の名前かというとMovie Booで無意味にプッシュしまくっていたJ・T・ペティ君なのですよ。
まさか「ブルー・リベンジ」にJ・Tが関わっているなど思いもしませんから「なんで?なんでなん?」と、大慌てです。いや別に慌てる必要ないんですが、何か慌てました。

それでその後いつもネタ元にしているAllcinemaとかIMDbとかMovie-Fanとか見たんですがどこにもJTの名前は載ってません。「幻覚でも見たんかな」と思ってたら、主人公のメイコン・ブレアその人がですね、初めて見た俳優と思い込んでたんですが、Movie BooによるとかつてJ・Tの「ヘルベンダーズ」に出演していたじゃありませんか。あらま。自分で書いていながらすっかり忘れてました。
ですので、そういう繋がりでJ・T・ペティがクレジットされていても何ら不思議ではなかったという話でして、「ブルー・リベンジ」の監督ジェレミー・ソルニエはメイコン・ブレア、J・T・ペティらと何かしら繋がりがあるんですね。無関係な繋がりか、もしかしたら友達絡みかもしれません。そう思うのは妄想かもしれません。事情は知りません。業界における友人って何だろう。

公式サイトがまだ生きているのでリンクしておこうかと思ったら、トップの目立つところにデリカシーのない文言を見たのでリンクやめときます。
MovieBooにデリカシーあるかどうかは横に置いといて、1/3くらいのところで出現する大事な展開をトップで堂々とネタバレしちゃいけません。
iTunesのところにあるイントロダクションがよく出来てると思います。このイントロこそ正しいイントロ、こっちのほうが楽しめます。

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