「モンスター」は実在した全米初の女性連続殺人犯アイリーン・ウォーノスを映画化したものです。このシャーリーズ・セロン演じるアイリーン・ウォーノスが強烈でまさに化け物。
映画の中では綺麗な人しかみたくないの、っていう坊ちゃん嬢ちゃんには強烈すぎてトラウマを残すかもしれませんのでご注意ください。
さてこの化け物ですが、精神異常者のスプラッター連続殺人鬼というのでは全然なく、もっと人間臭い人物として描かれています。どこか感情移入できる部分があるんですよね。それがどこかは人によってそれぞれかと思いますが、私は社会不適合者の駄目人間視点で見ます。この手の人間はさすがに女性では珍しいと思いますが結構います。同じ駄目人間でもアーティストになるか犯罪に走るか精神を病むかは些細な違いでしかなく、アイリーン・ウォーノスは犯罪者になってしまったにすぎません。そして駄目人間の一大特徴である責任転嫁も行います。私は、この駄目人間による責任転嫁が大好きです。駄目人間の責任転嫁に対して、したり顔で教育的正論を吐くみっともない人間を観察するのも大好きです。
ジェンダー視点で見る人もいるでしょう。酒場で出会う同性愛者の少女との愛の物語でもあります。愛の物語とアイリーンの犯す犯罪が対を成すように描かれますが、ここでややこしいのは売春に関わる心理的社会的な葛藤の問題ですね。ええと。つまり女を買うという行為を行う男性の中にある女性への嫌悪と蔑視とコンプレックス、これがそのまま恋人と暮らすアイリーンの嫌悪とコンプレックスに繋がるというか。
あぁ、ジェンダー関係はその道の専門の方におまかせしときましょう(逃げ)
何にしろ、強烈にして深く考え込ませ、しかもぐいぐいと映画世界へ引き込む力を持つこの映画は自信を持って名作認定いたしたいと思います。
2007.02.04
個人的な話ですが、白状しますとシャーリーズ・セロンを初めて観たのがこの「モンスター」なのです。
それで「なにこのすごい女優。誰だだれだ。シャーリズ・セロン?なんか、名前はよく聞くが、こんな凄い女優だったのか。知らなくて人生損してた。早速検索してみよう」と、検索してみたら出てくるのは絶世の美女ばかり。はて。これはだれだ。
なに。おなじ人か。がーーっ。と、ここではじめてシャーリーズ・セロンという美女が女優魂に命を賭けてモンスター役になりきったと、まるでロバート・デ・ニーロの如き事実を知ったのであります。
そしてそれ以来シャーリーズ・セロンさんを尊敬してやまないのであります。
この「モンスター」でアカデミー主演女優賞とゴールデン・グローブ主演女優賞を受賞したそうですね。受賞が全てではありませんが、当然の受賞であろうと思われます。
2010
“モンスター” への1件の返信