明治23年が舞台の「茶碗の中」では「今から200年前・・」と語られる200年前と明治23年の全く違和感のない歴史上の繋がりがある世界に少なからず衝撃を受けます。
明治どころか、この映画で散見できる日常や風景は、昭和のある時期まで確かに日本にあった脈々と引き継いできた我々の世界、どこか記憶にある世界です。
大正、昭和を経て戦後の米属国化の中で我々日本人が失ったものがどれほど大きいものであったかを思わずにはいられません。
「怪談」は小泉八雲による4つの作品を収めたオムニバス映画です。「大作」に相応しいセットや美術の懲りようは現代では再現し得ないレベルですね。役者も「大スター夢の共演」とばかり大物達が名を連ねています。この巨額の制作費を捻出するのはまさに血の出る苦労だったとか。
上長で文学的、幻想的で演劇のような演出方法は後の日本映画に大きな影響と誤解を与えたような気がします。
でもとにかくこの小林正樹監督の「怪談」がもう無茶苦茶好きで、幼少期に観てトラウマを飼いました。再見の喜びにむせび泣き。
2006.08.20
各エピソードは小泉八雲「怪談」を水木洋子が脚本化したもので、「怪談」は以下の4話からなります。
「黒髪」「雪女」「耳無し芳一の話」「茶碗の中」
どれも耽美的で美しく、絵面的にも舞台的なる演出も良いです。