映画技法の百貨店、フランソワ・オゾンが2012年にマリーヌ・ヴァクトを主演に映画を撮ってるらしいという噂を聞いてわくわくしていた「Jeune et jolie」です。「17歳」という邦題で公開していたことを全く知らずに気づいたときには時すでにお寿司でしたので見損ねていたんですがこうしてDVD化されましたのでいつでも誰でも見ることが出来ます。
マリーヌ・ヴァクトはセドリック・クラピッシュ監督の「フランス 幸せのメソッド」(2011) で俄然目を惹いたモデルさんで、あの時はこの可愛くて綺麗なこの子は誰だ誰だ何物だと勝手に一人注目して検索しまくってモデル仕事の写真やビデオを眺め倒してストーキング行為を行って当時情報なんか入れていなかった女優コーナーに詳細を入れたりしていました。その後に時々読んでるフランス映画のめちゃ早い情報を書いてくれてるブログで「オゾンの新作はマリーヌ・ヴァクト主演で撮影中」なんてのを見かけて「やったーやったー」と。しかし考えてみればこの美しい人にほんとはさほど興味あったわけでもないのですよね。一時の熱狂ですね。
「Jeune et jolie」というタイトルだったので、阿呆な私は「ジュネちゃんとジョリーちゃんのお話?」と間抜けなことを思っていましたがもちろんそんなわけないのでして、これは英語で言うところの「Young & Beautiful」というタイトルなんだそうですね。若くて綺麗な人の話です。つまりマリーヌ・ヴァクトその人のお話です。
ちょっと実際の話17歳という設定に無理はありますが、それは「危険なプロット」の青年もそうだし、マリーヌ・ヴァクトは演技力もありますのでわりといけてます。教室でのシーンでは少しだけ辛いものもありましたが。
さて表現技法の百貨店フランソワ・オゾンが今回どのような映画技法を用いたかというと、それはずばり青春映画です。まるで青春映画です。特にね、何かのシーンがあって、そのシーンと被さるように音楽が流れるシーンで顕著。もう青春映画のお約束中のお約束みたいなタイミングとそしてあのフランス歌謡の曲調。こうしたシーンは何度もありまして、そのたびにちょっともぞもぞと落ち着かない気持ちにさせられました。
技法は凄いが脚本も面白いフランソワ・オゾンの作品です。じとーっと、こう、どうなるんだろうどうなるんだろうと思わせたり、ここぞというところで驚きを持ってきたりと、脚本の妙技もたっぷり堪能できます。期待を裏切らないです。
表面的な技法に留まらず青春映画としてもよく出来てると思います。年頃のお嬢さんが観たときに、心にぐーっとくる、そういう真っ当な青春映画であると(多分)思います。
プチ売春に勤しむイザベルです。映像のカッコ良さやマリーヌの美しさや衣装など目を見張りまして、全編これ超お洒落です。お客も個性的。特に最初のあのおじさん、彼のあの地の底から響くいい声とか、哀愁とかいいですね。重要な登場人物です。
それからしつこいくらいに意識的に良いシーンを用意されている弟君です。この彼もまた面白くて最高でして。彼はきっと伸びるでしょうね。
母親を演じているのはジェラルディーヌ・ペラスですね。いい感じです。母親の夫もとてもいいです。この人、いいです。フレデリック・ピエロですか。
それからですね、シャーロット・ランプリングです。この人はもはや存在としてシガニー・ウィーバーのようです。ここぞというところで登場して「出たーっ」とのけぞらせます。
そしてこの上なくいいエンディングを迎えます。
マリーヌ・ヴァクトの魅力も炸裂ですね。美しいです。