日本で紹介された順序が逆ですが、この「サプライズ」がとても評判よろしくて、何だ何だこいつ何なんだと騒ぎになり前作である「ビューティフル・ダイ」も上映されたのだとか。
まあ、評判なんかは当てに出来ないこともあるのですがパッと見面白そうなのでもちろん観ました。
「ビューティフル・ダイ」もたいへんよい出来でしたが、この「サプライズ」もすんごいです。結論を先に書くとですね、めちゃめちゃおもろい、ごっつ出来が良い。たまらん映画、最高!絶賛!と、そのような感想です。はい。
「サプライズ」っていう邦題はちょっと妙で、なんかストーリー的にサプライズがあるかのような誤解をされるかもしれませんが原題は「次はお前だ」という殺人者のメッセージになっております。ストーリー的に斬新とか意外なるどんでん返しみたいな感じではありません。言ってみれば割と単純明快です。
ですがそこじゃないんです。単純なストーリーのその一個ずつのエピソードやシーンなんです。細かな演出、鋭い編集、ハイセンスな細部のこだわり、このあたりが注目のポイントとなっております。
この手の映画ってのは結局殺人者が追っかけてきたり潜んでいたりして、それでこっちは逃げたり殺されたりするわけでして、このドキドキやショックシーンを如何に面白く演出するかっていうところに作品の評価が左右されます。オーソドックスなことを撮るときこそそれが如実に現れるわけで、若きアダム・ウィンガード監督、そのあたりもう完璧です。才能ありありです。
登場人物たちは家族です。結婚35周年に両親が買った別荘に集う子供とそのパートナーたち。意味ありげだったり怪しかったり、最初の登場人物紹介パートも面白いんです。「お母さん、キュート!」っていうほのぼのシーンあり、久しぶりに兄弟が会って傲慢な兄の態度に内心ムカムカの弟あり、にこやかに振る舞ってるくせにあとで「誰あの娘、訛ってるわね」などと失礼な物言いありと、このままこの人たちが殺されるのが勿体なくて、何となればスリラー映画やめて家族のコメディ映画になってくれてもいいよと思わんばかりの良い調子です。
観る者にそういう気持ちを起こさせるのが上手くて、例えば娘の彼氏ってのが出てきます。中東系アメリカ人で、ドキュメンタリー映画を撮ってる映画監督という設定です。
「アングラ系の上映会で公開されたんだ」と、芸術家肌の監督です。
「何だよそれ地下の映画館?それよりCM撮りなよ」無神経な兄です。
「彼はそういう監督じゃないのよ」彼氏を庇う可愛い娘です。
「何言ってんだい、CMって面白いんだぜ、恰好つけて幅を狭めてないでいろんな仕事しろよ、貧乏監督がカッコいいとても思ってんのかよ」
自虐的なコントのようなシーンですが、一発で登場人物の肉付けができています。
ところでこの映画監督タリクを演じているのは本当の映画監督のタイ・ウェストです。「ABC・オブ・デス」の「流産」っていうのを撮りました。
「流産」しか観ていないので紋切り型の批判はいけませんが、たしかにアートよりの作風ですが全然おもろくないという、いかにもインディーズ監督っぽい作品でした。
最初主人公に見える髭でぽっちゃり型の次男は兄に「こいつは昔からデブ。顔も丸いし」ととことん馬鹿にされてムカついています。この次男は「ビューティフル・ダイ」で殺人狂の役だったAJ・ボーウェンが演じてます。
次男の彼女は可愛らしい感じを残す快活な女性で、台所に行って「お母さん手伝いましょうか」なんて言う気が利く娘です。シャーニ・ヴィンソンっていう女優さんです。映画では「学生さん?」なんて言われるほど若い役ですが実物はそれほど若くありません。女優ってどんな人にもなれてかっこいいですね。
ところで「ビューティフル・ダイ」からはケヴィンだったジョー・スワンバーグが兄貴の役、サラだったエイミー・サイメッツがエイミーの役で出ています。ジョー・スワンバーグは映画監督でもあります。「V/H/S」にも参加してますね。やっぱり観てみようかな。
まあ、そんなこんなで大勢が別荘に集い、誰が誰だかわからないということにもならず短い時間でビシッと人物を紹介しつつ、そして直後、獣の仮面をつけた殺人者たちに襲いかかられます。
特に最初のほう、被害に遭う人間のチョイスはまさにびっくりサプライズ。もうね、可哀想で可哀想で。彼とかね、彼女とかね、ほんとにもう、ほんとにもう。
そんでもって、当初予想していなかった人物が俄然活躍し始め、主人公となります。誰を中心に話を進めるのか最初不明にしておいてだんだんそうしてくるっていう展開もまたいい感じです。
その後はもう説明不要です。めためたに面白いのですよ。面白かったーというしかありません。褒めちぎることしか出来ません。万歳を叫ぶレベルの出来の良さにもうメロメロ。
冒頭は別の家の殺人が描かれます。被害者がCDをリピート再生して、ヘンテコリンなロックの音楽がかかりまして、殺されたあともリピートで再生され続けます。不気味というより音楽そのものが辛くて、もうやめてー音楽止めてーとこちらは心で叫ぶわけですが、何と恐ろしいことがエンドクレジットでも待ち受けていました。
「もうやめてー。音楽とめてー」と、映画の面白さに大興奮の最中、半笑いでのたうち回るわけです。
あのロック音楽、もしや監督のお友達バンドとかそんなんでしょうか。
はじめまして。
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