TIME CRIMES タイム・クライムズ

Los cronocrímenes
ナチョ・ビガロンドの長編映画デビュー作は小気味のよいタイムトラベル作品。ホラーとSFとミステリーを小さな世界感で転がします。
TIME CRIMES タイム・クライムズ

エンド・オブ・ザ・ワールド 地球最後の日、恋に落ちる」という爆裂おもろい映画を見たので監督作品他にないんかと思ったらこれがありましたので観たのです。
短編映画を撮っていたナチョ・ビガロンドの初長編映画で、タイムトラベルもののSFです。でもホラーテイストやスリラーのテイストと融合してまして、それから何となくすっとぼけた感じのコミカルな要素も入っていて盛り沢山、というか地味、というか妙な映画です。初長編映画にナチョ・ビガロンドの才能がキラリと見え隠れしています。

どんくさい感じの亭主と妻が出てきまして、森の近くの家に越してきたばかりのようです。まだ一部改装中の家です。亭主が庭で双眼鏡を覗いていましたら森の美女が服を脱いでいます。「おっ」と乗り出す亭主。ちょっと見失ったので森まで見に行きます。そこでハプニングが発生し、あれよあれよと森を駆け抜け不審な建物に入り込みまして、またもあれよあれよと60分前の時間へ移動、ここから60分間タイムパラドックスSFへと突入します。

昔から多くのSF作家が挑んできたタイムパラドックスものです。ハインラインの「時の門」や広瀬正「マイナス・ゼロ」など名作もいろいろありますがナチョ・ビガロンドのそれは基本チープです。大筋はなんとなく予想の範囲内ですし、タイムパラドックスSFを茶化しているようにも感じられます。大真面目にタイムパラドックスに挑んで「『時の門』を開く」のような考察を必要とするタイプのSFではありません。タイムパラドックス部分にツッコミは不要です。
ハサミを持った包帯男というホラーキャラクターとSFの融合や駄目そうな亭主を主人公にしたりと、チープながら個性を感じます。オリジナリティあります。それなりにちゃんと面白いんですよ。印象深いシーンなんかもありますし。結末近くの少し予想外の展開もとてもいいです。ほんとですって。
ホラーでコミカルで、それから妙な味わいもあり辛く哀しいテイストまで盛り沢山のこの映画、ケチを付けるためではなく素直に楽しむのがよろしかろうと思います。

Time Crimes [Italian Edition]

ナチョ・ビガロンドの作品はこのあと「エンド・オブ・ザ・ワールド」と、あとは「ABC・オブ・デス」の短編しか現時点で日本に紹介されていません。
YouTubeにNacho Vigalondoチャンネルがありまして、ここで変なパロディ作品みたいなのや他にいろいろ動画が置いてあります。この監督がいったいどういう人なのかはよく知りません。大丈夫なのかとちょっと心配になったりしますが、まだまだ諦めずに期待し続けるつもりであります。

あ?
DVDのパッケージをよく観たら「デヴィッド・クローネンバーグによるリメイク」とか書いてありますよ。ほんとですか。そういう計画があったんですか? でもこれは実現不要でしょう。どうなんですか。いらないですよね。

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