バーニーという男がどういう人間だったのか、街の人の証言がインタビュー形式で随所に挟まれ、ストーリー進行を手助けします。それとバーニーの振る舞いが序盤交互に描かれますね。面白い構成になっています。だんだんと物語が浮かび上がりますよ。時にヘンテコリンな笑いも含め、頑固ばばあの心を解きほぐすいい話を交え、さらに危ういことにだんだんなっていきます。
バーニーはちょっと太ってちょびひげを蓄えた温厚そうな男です。死者に敬意を表し丹念に死に化粧をするこの男、葬儀社の人間なのですね。葬儀社の人間だから死者が発生したときに死に化粧も含め一切を取り仕切ります。遺族には細やかに優しく接し、教会では段取りよく、歌まで歌います。また歌が上手くて。それもそのはず、このバーニーを演じるのは「スクール・オブ・ロック」でもお馴染み、ジャック・ブラックです。
「バーニー」ではジャック・ブラックが大いに熱演し、優しくて歌が上手く、いい人光線を出しつつも何とも危うい状態を醸し出す複雑な役を演じきりました。
ジャック・ブラックの才能を買っています。コメディもいけるし、意外と眼光するどい抜け目のない役もいけます。個性的な顔立ちで、もっと大スターでもおかしくないと思ってます。そうですね、ロビン・ウィリアムズ的なるものも、フィリップ・シーモア・ホフマン的なるものも内包しています。でもやはり彼らには一歩届かず、作品にも恵まれているとは言い難いかもしれません。
「ナチョ・リブレ」を除けば、「キングコング」と「バーニー」はそんなジャック・ブラックの才能をたっぷり引き出したと思うんです。間違いなくジャック・ブラックの個性は貴重です。
ということで、ジャック・ブラック氏を語ることもないんですが「バーニー」はその構成の面白さとジャック・ブラックの魅力でとてもいい映画に仕上がってると思います。
ただ、その構成の面白さやストーリーテリングが若干文学的な香りもして、そのせいで一般的な意味で強く印象を残すことがなく、大きなヒットにも語り継がれる名作にもなりにくいことになったかもしれませんね。いえいえ、大ヒットはしてるし賞の候補にもなってるんですが、何というかやっぱりちょっと地味な扱いというか。旬が過ぎると尚更そう思います。
実際、私もこの感想文を書くに当たって、最初どんな映画だったかまったく思い出せませんでしたもん。でも記憶を探るほどに、意外な展開もするし良い印象だったことが思い出されます。そうだったそうだった、後半は裁判のシーンになるんですよ(今思い出したらしい)
意外や意外、でもそれまで注意深く描かれていた土地柄について、つまり西部の田舎町における住人たちのメンタルを巧みに利用した裁判シーンとストーリーテリングになってきますね。序盤からのインタビューシーンもじわじわ効いてきます。そんな感じでした。
さてこの映画は実話を元にしているというとおり、まじもんの事件を扱った映画です。実際にリチャード・リンクレイター監督もジャック・ブラックも本人にも会って取材をしているようです。映画完成数年後の2014年、減刑が叶い早期釈放となった本人をリチャード・リンクレイター監督は自宅敷地内のアパートに住まわせることにしたそうですよ。何だか凄いことですね。
ネタバレの酷い予告編よりこっちのインタビューのほうがいい感じ。