「チャイルドコール」と同時に日本に紹介されたポール・シュレットアウネ監督のこちらは2005年「隣人」です。
我らが男アイドル、クリストッフェル・ヨーネルが気の弱そうな優しそうなふられ男の主人公です。
冒頭、元恋人が荷物を取りにやってくるところからお話が始まります。
事情はわかりませんが一緒に暮らしていたけどふられた模様です。やや意味深なる会話があったりしますが、可哀想に、主人公のヨーンはおどおどしています。
そしてその後、一人で会社から帰ってくると初めて見かけるアパートの隣人女性に声をかけられます。「家具を動かすの手伝ってくれない?」
鞄を自分の部屋に置きに帰ることもままならず、そのまま隣家へと向かうヨーン。隣家にはもう一人女性がいて、この魅惑的な女性二人のために家具を動かし、浪波と注がれたワインを飲みます。誘惑されそうですがヨーンは気分的にもそれどころではないのでやっぱりおどおどしたりあたふたしたりしています。
という感じで始まるこのお話、結論を先に言いますとこれは素晴らしい出来映えでした。
とても個人的な意見であります。いつも個人的意見で当たり前ですが、ここで敢えて強調します。非常に個人的な感想として、この「隣人」という映画が傑作であると断言します。
見終わっても席を動く気になれません。衝撃のオチのせいじゃないですよ、それは悲哀や辛さの感情的な部分においてです。もうひとつ、最高の映像表現や演技、緻密な構成や技術的側面による映画的魅力に打ちのめされたからであります。時として優れた芸術作品を前に絶句して立ち止まることがありますが、この映画にもその力が宿っています。
ストーリーだけを追えば、適度なホラーテイストにオチがついているだけの簡単なお話です。尺も75分ととても短いし、複雑な展開も特にありません。
でもこの映画の芯はストーリーとオチだけではないんですよ。
ネタバレしないように慎重に書きますが、この作品は基本ホラーテイストのスリラーです。ですのでオチがありまして、それをどんでん返しと呼ぶのは良いとしましょう。
でもね、そうじゃないんです。
オチで驚かしているんじゃないんです。
オチは映画を観ている間、ある程度予想できますから、それを前提に見ることになるんですよ。その予想できる真実を想像しながら今現在起こっている現象を見るというその面白さがたまらないんです。驚きがあるとすればそこなんです。そういう風に作ってあるんです。
それがこの映画の斬新さです。
このやり口をもう少し広げた「チャイルドコール」に思いが広がります。「チャイルドコール」もうっかりすると「あぁそういうオチね、ふーん」となりかねません。実際、私も最初そういうのに近い感想を持ってしまいましたからね。わかるんですよ、軽々しく見てしまうってことが。でも違います。
ネタを明かすのに慎重すぎて辛気くさくなってきましたので話変えます。
俳優さんですが、我らが男アイドル、クリストッフェル・ヨーネルの素晴らしさを堪能できます。おどおどして弱気で優しいところもあります。悲哀に満ちています。
「チャイルドコール」も良かったし、初めて見かけたのは「孤島の王」ですが実に味わい深いいい俳優ですね。
「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」のあの超個性的な主人公を演じたミカエル・ニクヴィストも出演していますよ。まあなんともものすごい役です。
というわけで今日のところはこのへんにしておきます。
この映画は東京で春先に公開され全国どさ回りはまだ終わっておらず、地元ではそろそろ公開されます。ですのでネタバレ系の感想文は今の次点では避けておきます。
でも多分近いうちに追記します。だって言いたいことが山盛りあるんだもん。
スリラー系のわりには予告編がよい編集です。これは珍しい。予告編を見てもOKですね。
つづく
壮絶ネタバレの追記は次のページということにしました。