ナイト・シャマランが「シックス・センス」の大ヒットの後に送り出した話題作。広告会社も映画ファンもみんなしてよってたかって「シックス・センス!」「どんでん返し!」の大合唱。こりゃたまったものじゃありません。
そもそもからして「シックス・センス」のどこが良かったのか、みんなよーく考えないといけません。落ちだけがよかったのか?どんでん返しだけがおもしろかったのか?違うでしょう。「シックス・センス」は家族の愛の物語です。せつなくて悲しくて、あの車内のシーンでみんな泣いたでしょう?どんでん返しそのものじゃなく、そのどんでん返しによって再発見される少年とおっさんの関係性を見直して震えたわけでしょう?
まシックス・センスのことはいいか。
で、「アンブレイカブル」
正直に告白します。私もじつは「シックス・センス!」「どんでん返し!」と思って劇場に足を運んでしまいました←おいっ
その気持ちのせいであまり楽しめないまま時間が過ぎ、後半からエンディングにかけてやっと別の映画、別の面白さであることに気づいたわけなんです。最後エンドクレジットを眺めながら大興奮。「そっかー」「こりゃたまげた」「こりゃやられた」「これ最高」心の大絶賛です。
それはなぜか。
この映画のキモはシックス・センスと同じくやはり家族です。主人公の家族、あの人の家族、家庭の不和から少年時代の思い出話から何から何までドメスティックなジメジメした世界を丁寧に描きます。そうです。ナイト・シャマランは家族を描くアーティストです。
そしてファンタジーです。気合いを入れた家族のドラマとファンタジーの融合、これこそが紛れもなくナイト・シャマランの一大特徴ですね。
とにかく「アンブレイカブル」で描くファンタジーはぶっ飛んでます。あまりにも馬鹿馬鹿しいので観客の誰もが本気にしないのです。でも作り手は本気中の本気。このギャップが面白さの大きなポイントです。どろどろのドメスティックドラマとぶっ飛びファンタジーの完全融合、こんな馬鹿な映画を作る人はそうそういません。
そしてクライマックス。
このブログはネタバレなしが使命ですから詳しくは書きませんが、最後のおひねりじゃなくてもう一捻りは、フィクションの外側からフィクションに帰結する文学的技法を取り入れた展開です。よく使う言葉で申し訳ないですが「メタ」ですね。
なんのことかわかりませんか?この映画を観た人は最後のほうの会話をぜひ思いだしてください。因果が変なことになってるでしょう?そこんところがたまらないのです。そこんところがこの映画の特殊な立脚点で名作認定しているところなのです。
そして最後に彼は立ち上がり、叫びます。
「博士の異常な愛情」を思い出させるシーンです。全身に鳥肌が立ちました。