デビュー作「ラスト3デイズ 〜すべて彼女のために〜」で大注目された新鋭フレッド・カヴァイエの二作目です。
前作は、愛しの奥さんが殺人犯として逮捕されてしまってあたふたする男の話でした。
今作「この愛のために撃て」は愛しの奥さんが誘拐されてしまってあたふたする男の話です。
どちらの作品も、わりと普通っぽい冴えない男が主人公で、ちょっとおっさん臭いやつです。これがまずとてもいいです。
「この愛のために撃て」の設定を見ると、巻き込まれ型のサスペンス・アクションを連想しがちですが、ちょっと違うんですね。サスペンスとかスリラーではありますし、アクションシーンもありますが、どちらかというと昔なつかしギャング映画、ハードボイルドとか任侠の世界に近いものがある印象です。
まず謎の人物がショッキングな冒頭シーンを経て入院するところから始まります。
その病院に勤務している看護助手が主人公で、いい年こいたおっさんに見えますがまだ正式な看護師にもなれていないという、そういう冴えない奴です。
でもどういうわけか超綺麗な奥さんといい暮らしをしております。この奥さんがどれほど綺麗なのか説明しましょうか?
「私が、生きる肌」のエレナ・アナヤなんですよ。どうです、驚いたでしょう。正職員でもない看護助手がどうしてエレナ・アナヤの一杯の愛を受けて幸せに暮らせているんでしょう。謎です。
その謎の答えはただひとつ。この映画が任侠ハードボイルド映画だからです。
撃たれた上に交通事故で吹っ飛ばされた冒頭の謎の男です。何か悪い世界の人っぽいですか。どうなんでしょう。
この謎の男を、病院から連れ出せという誘拐犯人からの指示です。連れ出したら奥さんを返してやるよということですね。信じていいんでしょうか。
謎の男は命を狙われているっぽいですから、犯人に引き渡したら殺されてしまうんでしょうか。それとも、連れ出せと命じた誘拐犯は謎の男の仲間で、本当に助けようとしてるんでしょうか。
ところで、腹を撃たれた上に交通事故で吹っ飛んだ謎の男は、その後いろいろと動き回ったり活躍したりします。瀕死の状態で入院していた奴が注射一本でしゃきっと蘇って走り回ったりできるものなんでしょうか。謎です。
その謎の答えはただひとつ。この映画が任侠ハードボイルド映画だからです。
とにかく、看護助手の奥さんは誘拐され、謎の男との行動が始まります。
普通に序盤を見ていたら、この映画は奥さん誘拐事件の犯人を追う映画だと思うでしょう。例えば「96時間」みたいな。あれも確かに任侠でした。アクション任侠でした。
でもこっちはああいう誘拐事件を追うだけの話じゃなく、ちょっと様子が変わってくるんですね。
物語のある地点から、急展開いたしますよ。普通の誘拐サスペンスではない面白さがどんどん出てきます。ストーリーは見てのお楽しみなのでバラしませんが、アクション映画と思わず、任侠映画とかハードボイルドとかの系統だと思えばいろいろと楽しめます。
前作「すべて彼女のために」と「この愛のために撃て」に共通するのは、警察を徹底的に軽蔑していることがうかがえることです。
もうね、警察の扱い笑っちゃいますよ。警察なんて所詮あほばっかりの犯罪者という視点が滲み出ています。そういうところがとても好感持てます。
この映画が任侠ハードボイルドの系統だということは見ていれば誰でも感じ取れますが、製作者のプロフィールを見るとさらに合点できます。
製作のお二人がこれまで作ってきた映画は「ギャングスター」「あるいは裏切りという名の犬」「やがて復習という名の雨」「そして友よ、静かに死ね」などであります。
この邦題を見ているだけでわかります。
謎の男の謎性は凄まじいものがあります。キャラクター設定が濃すぎてついていくのがたいへんですよ。でもついていけたらカッコ良すぎて痺れまくること請け合い。そこのお嬢さん、もうこの謎の男サルテの魅力にイチコロになりますから、覚悟しといてください。
ワイルドで強くて攻撃的で野生的で怖くて冷血漢で犯罪者で兄弟思いで優しくてクールでしかも賢くてインテリでハッキングもできて(それほど上手じゃないけど)信頼されまくって仲間は山ほどいてギャングのボスとも仲良しで義理人情に厚くて、でも割と根に持つタイプでしつこい奴だったりして、もうね、何ですかこの人の詰め込み設定は。
というわけで、活劇任侠おもしろハードボイルド「この愛のために撃て」でした。これ面白かったです。好きですこういうのも。
最後は愛しのエレナ・アナヤのブロマイドで締めときますね。いいですね。綺麗ですね。「シャッターラビリンス」も今となってはエレナ・アナヤのブロマイド映画として貴重です。
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