「ザ・ナイト・クロニクル」は、M・ナイト・シャマランのネタを若いスタッフに与えて作らせるというプロジェクトです。きっと沢山のアイデアストックから「自分がわざわざ撮るほどでもないか、どんな風に仕上がるか予想も出来るし」っていうのをプロデュースするんですね。
若い人を育てるっていうのは、アイデアも含めて挑戦させることに意味があると思うので、これは人を育てるというよりも人の技術を育てるという意図を感じます。加えて、やはりシャマラン自身の活動の一環であると考えた方がいいかもしれません。
監督のジョン・エリック・ドゥードルは「REC」のハリウッドリメイクを手がけた監督らしいです。
さて「デビル」は不穏な都市の逆さ映像から、人が落下するシーンへと繋がる冒頭です。
どんな話か全然知らずに観たのと、全く何の期待もせず見始めたために随分楽しめました。
映画の面白値は、実際の面白値から観る前の期待値と事前情報値を差し引いた値でありますので、このような期待値0で何も知らずに見始めた作品は最終的な面白値が高くなって随分とお得というわけです。
事故か事件かオカルトかというミスリードを含めた展開は面白いですが、若干ストーリーを追いかけているだけでミスリードが成立していないふうに感じられたりしますし、ラストに繋がる本筋とは別枠にあるドラマ部分の心情的な効果も、もっと効果的に演出出来たろうにと思いますし、いろいろと詰めが甘かったり説得力に欠ける部分もあると言えばあります。
しかしそんなことは大した問題じゃないです。観ているあいだはずっと面白いし、最終的な「サスペンスかホラーか」どころではない寓話かお伽噺としてのあっと驚く優しさに満ちた落とし方なんかは流石と思いたくなる天晴れさです。
シャマラン本人ならどう撮るだろう、と始終思わないではおれませんが、それほどシャマラン色が強いという裏返しでしょうか。
なんとなく若いスタッフがコマにされて気の毒なような、いい勉強になっただろうなと微笑ましいようないろんな感想も持ちます。
シャマラン作品の多くがファンタジーであり寓話であり愛や赦しの人間の心の物語です。そいつにいろんな仕掛けを施しサスペンスやホラーやSFなどの味付けを加えてはぐらかし、多面的な作品に仕上げます。
「デビル」でもその目論見は同じですが、それがどこまで上手くいったのかいってないのか、判断の別れるところでしょう。
基本的には見るこちら側にも優しさが必要であると思います。
「ザ・ナイト・クロニクル」は、この後も作品を用意するそうです。楽しみですね。
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