今更言うまでもない「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」に続くシリーズ2作目「ドーン・オブ・ザ・デッド」です。
ゾンビがうろつく終末感たっぷりの世界。今回はテレビ局員やSWAT隊員たちが街から逃れて辿り着いた郊外のショッピングセンターが主な舞台です。大型ショッピングセンターですから物資も豊富で何でも取り放題。楽しそうな一面も描かれます。
そこに襲いかかるゾンビの群れ。さらに生き残った他の不良人間たちとの激しい死闘。
最早古典と化したロメロのゾンビ三部作。古典と化すにはそれ相応の理由があります。これは面白い。
随分前に見ているのですが再見です。当時見た時は「なんだこりゃ」と、面白さが全くわからなかったんですがそれも若気の至り。
この退廃感と後にホラー映画の定番となる数々のネタ、それに70年代の最後の輝きを堪能できる雰囲気たっぷりの演出はどこを取っても心地よいです。
2009.07.20
この映画は沢山のバージョンがあることが知られています。
日本劇場公開版、米国劇場公開版、ダリオ・アルジェント監修版、ディレクターズカット版、何とか版、何とか版です。ビデオやDVD化の際にちょくちょく手を加えたりもしているそうです。
wikiによると、米国版は127分でロメロ独自の暗さが特徴、ダリオ・アルジェント版は119分でゴブリンの音楽が特徴、ディレクターズカット版は139分で生活描写が特徴とのこと。
日本版は残酷シーンが削除されたり静止画処理された上に、オープニングに宇宙のシーンと余計な説明がが加えられた情けない編集になっていたらしく、あ、昔見たのはこのバージョンですよ。どおりで印象が悪かったはずです。と、まあそういうことで昔劇場版やテレビ放送のバージョンでしかこの映画を知らない人は改めてDVDを観るのもよろしかろうと強く思う次第です。
ちなみに80年に放映したというテレビ放送版は、残酷シーンのほとんどをカットした90分版で、宇宙のオープニングシーンありのBGMを他の映画から差し替えありのエンディングをハッピーエンドに変更ありのトンデモ仕立てになっていたそうです。
そういえばこういう「オリジナル改変」について思うことがあります。
そもそも昔、日本の庶民に西洋文化を理解するのは不可能だと感じた「紹介者」たちは、いろんな工夫を施してわかりやすさを提供しました。
(ここからゾンビの話でなくなります。昔というのはこの作品よりもっと昔です)
余計なお世話だと思うのは今の感覚だからかもしれません。むかしの映画やテレビドラマやアニメなど、日本人向けに会話の内容はおろか、設定を変えたり登場人物の名前を変えたりしまくっていたんですね。
オリジナルを大事にする気持ちなどありません。いや気持ちはあっても、オリジナルを日本の庶民に気軽に楽しんでもらおうとすることを優先した結果だと思います。吹き替えを用意したりすることなんかもそうです。
邦題っていうのもそのひとつ。むかしの映画にはたいてい気の利いた邦題がついています。
今の感覚で「邦題がダメダメだ。むかしのはセンスがあってよかったのに」という人がいますが、私はむかしのも今のもどっちもトンデモには違いないと思ってます。ただ、昔にはその必然性があり、工夫した人の心意気を感じることがあっても、今時のにはそれを感じないというだけです。なぜなら、今時は「なんとか外国映画を日本庶民にも紹介したい」みたいな時代に沿った目的意識が不要だからです。また、「オリジナルが大事である」という感覚もすでに染みついています。
今時は後退時代に突入して、ふたたび庶民に気を遣う時代が到来しているという風に感じます。字幕が読めなかったり物語を把握する能力がない人が増えているそうです。
そういう人たちにも海外の映画を楽しんでもらうためには、タイトルを変更したり吹き替え版を上映したりオリジナルにない説明を加えたりする必要があるとのことで、日本が先進国・文化国家から転落し低知能化国際的田舎化が進行している証拠の一つなのかもしれません。
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