毎日毎日、直感で選んだ映画があまりにも面白すぎるので、たまには気を抜かないと名作死してしまう。そこで「ザ・ホード」というゾンビものらしい映画を観てみました。先日は同じような動機で「蝋人形の館」を見てみたらこれが超面白い一大娯楽大作だったので今度こそは「そこそこ」の普通の気の抜けた映画でまったり過ごそうと目論みました。
と、ところがふたを開けてびっくり。またもや超面白映画を選んでしまったようです。
これ、面白いです。フランス映画の底力。ゾンビアクション映画という出尽くした感のあるジャンルでフレンチならではのオリジナリティを発揮しました。
冒頭、ギャングに殺された刑事の仲間の刑事たちです。この刑事たちが曲者で、「復讐」「皆殺し」「ファミリー」なんて言葉が噴出です。おまえらこそギャングやろと言いたくなるやくざっぷり。おまけに「不倫」話が絡みます。フランスは愛の国なので愛の事件に寛容であると同時に愛の事件には本気です。この連中がギャングのアジトに忍び込みます。真っ当バイオレンスです。
それでですね、このバイオレンス部分が面白くて夢中になっていると突如ゾンビ映画になります。この急展開が見どころです。映画ファンならピンと来る「フロム・ダスク・ティル・ドーン」を彷彿とさせるビックリ展開に思わず漏れる歓喜の声。
ギャングたちも個性的な面々です。人物がちゃんと立っていて、ステレオタイプに近い設定の中に独創的な部分を多く含ませています。「どうでもいい」役がないのが丁寧な脚本の勝利なんですね。
さてさてさて、復讐に燃える刑事とギャングたちがゾンビの群れにどのように対処していくのか、途中に出てくるアメリカを茶化したような人物や展開、ゾンビに囲まれても不倫ネタの会話で盛り上がるフランス映画としての自信、そういったものを散りばめながら目を離せない展開に釘付けです。
ゾンビとの闘いに関しては、対ゾンビ肉弾戦が新しいです。銃でバンバン頭をぶっ放すだけじゃありませんで、捕まえて引きずり回し蹴りや頭突きを入れます。
そしてラスト、ゾンビの群れに囲まれた刑事とギャングはどうなるのでしょう。誰が生き残るのかあるいは全滅かそれはもちろん秘密です。この映画の面白さを集約する素晴らしいエンディングです。この抜け目のなさ、この典型からの脱出、シンプルにしてパーフェクトなラストを迎え、この作品、ゾンビ映画というよりもやはりフレンチ・ホラーの範疇であったと深く納得できるたいへん良いエンディングとなりました。
監督のお二人は聞き慣れぬお名前。製作総指揮は「フロンティア」のザヴィエ・ジャンです。うん。「フロンティア」よりこっちのほうが好き。
出演の役者さんも皆良い感じです。でもあまり知らない人ばかりです。足のシーンが最高だった癖のあるあの方はジョー・プレスティア(Jo Prestia)「アレックス」のテニアですか。そうだったそうだった。「変態村」にも出ています。
タイトルの「La Horde」は「群れ」です。シンプルなタイトルです。
ギャングは移民で多国語シーンもあります
ゾンビジャンルでこれやられたらアメリカ映画の立場が危ういかもね
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