邦題にはパターンがあって、告発のなんたらだの、告白だの評決だの真実だの瞬間だのその手のタイトルもある種のパターンを踏襲してますがこのありきたりのタイトルのせいで内容を別の映画と勘違いしたりすることも間々ありますね。で、パターンでいうと「告発」系はわりと社会問題をシリアスにあつかったものに多いような気がします。良作も多いんではないでしょうか。ていうか「告発」と「告発のとき」以外に何かあったっけ?
戯言はいいとして、この「告発のとき」ですが、これもまた大変な良作です。「クラッシュ」で大注目されたポール・ハギスの二作目ですが、この人は早くも巨匠の域ですか。見事な構成力。
実話をベースにしていますが、映画的には息子の行方を追うミステリー仕立てです。息子はイラクでどんなだったのか、何があったのか、どこへ行ったのか、トミー・リー・ジョーンズ演じるガチガチ頭の保守人間の父親が捜査に聞き込みにかけずり回ります。
サスペンスフルでミステリー、その奥にイラク戦争の現実が幽霊のようにつきまといます。
実話ベースというと地味なお話を想像されるかもしれませんが、ミステリ作品としてもかなりの面白さで、もはやこの作品に関しては実話かどうかは二の次の問題です。
役者のみなさんも大変素晴らしい演技で、社会問題を人間ドラマに落とし込む作業に一致団結して取り組んでおられます。
この映画は単にアメリカを批判しているのではなく、アメリカの病理を危機として告発、救助信号を発してるんですね。悲鳴にも聞こえます。
原題は「エラの谷」。映画中にお話として出てくる旧約聖書のダビデとゴリアテの闘いの場所。本編のテーマもそこにあるんですね。
2009.01.20
2010.09.17
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