この映画の冒頭は孤児院で遊ぶ子供たちです。最初は「だるまさんが転んだ」をやっています。花粉か何かキラキラしたものが舞う中、子供たちが遊ぶシーンは黄金色のたいへん美しい映像です。電話がかかり、子供たちの中の誰かの里親が決まったことを臭わすシーンへと続きます。
その後、「海を飛ぶ夢」で印象的な役を演じたベレン・ルエダ(Belen Rueda)演じるラウラと7歳のこどもシモン、夫カルロスの “新しい生活” シーンへと飛びます。
どうやら閉鎖されていた孤児院を買い取り、 新しい施設として再建しようと準備を進めている様子。
息子シモンは慣れない暮らしのせいか「想像上の友達」とこっそり会って遊ぶようになり、不安を感じます。ソーシャルワーカーを名乗る怪しい老婆が現れたり、ちょっと怖い謎の雰囲気を漂わせながらお話は始まります。
この映画はホラーと言ってしまうことに大きな抵抗があります。単にスリラーと言ってしまうことにもちょっと躊躇したいですね。かと言って普通のドラマでもないし、カテゴリーに押し込めるのが難しい作品です。ミステリアスでファンタジーかな。
製作総指揮のギレルモ・デル・トロは時として一つのジャンルで括りきれない一連の作品を今までも作ってきました。 「デビルズ・バックボーン」や「パンズ・ラビリンス」ですね。この「永遠のこどもたち」はそれら作品の系統であると言えるかと思います。
今回、監督は若手のJ・A・バヨナという人で、資料を見る限り監督作品は「永遠のこどもたち」だけですね。多分、ギレルモ・デル・トロの意向が強い作品と思われます。でも、デビュー作にしてこの作品、怖さの演出や、あっと驚くビックリシーン、思い返して身をよじる伏線の映像美など、かなりの才能とお見受けしました。次回作が楽しみです。
そうなんです。この作品には怖いシーン、ショッキングなシーン、悲しいシーン、悔しさで張り裂けそうなシーンなど心を揺さぶられるシーンがたくさん出てきます。根底に流れる死とノスタルジーのイメージがそれらを包み込み、全体に一環した空気の流れを作っているように感じます。
余韻を残す良い映画です。悲しみと後悔を包みこむ穏やかな解放の物語と言っていいかもしれません。が、見終わった直後はとても素直に解放などされません。まさに心が張り裂けたままです。いずれゆっくりと余韻に浸るようになれるでしょう。
霊媒師役のジェラルディン・チャップリンさんは、チャップリンの4番目の妻との間に生まれた娘さんらしいですね。
2010.04.07
第22回ゴヤ賞脚本賞を受賞。うん。脚本、かなり良いですからね。
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