労働者三部作と言われるアキ・カウリスマキの初期三部作の「パラダイスの夕暮れ」に次ぐ2作目。本作「真夜中の虹」そして「マッチ工場の少女」 がその三部作とされています。
炭坑の閉山により失業したカスリネンは、新しい人生を求めて友人に貰った車で南を目指します。転がるようなロードムービー的ハードボイルドのはじまりはじまり。
しかしまあアキ・カウリスマキが描くとなぜこうなるのでしょう。「田舎もののカッコつけ」「失業者」「負け犬」「一瞬で恋に落ちる二人」「珍妙な友情」「おとぼけ」「間」などなど・・・カウリスマキ映画の魅力が全て詰まっているこの小品、たまらないです。
極めつけはマッティ・ペロンパーのずば抜けた個性。彼の振るまい、喋り方、表情、登場した瞬間から見る者の変な魂部分を鷲掴みです。
今回は子供も登場して、その子がまた何と言いますか、味わいがあるというか、子役にさえあれほどの個性を与えるのは異常としか思えない。ドリンクの飲みっぷりや、初日から普通に「パパ」と呼ぶところや、旅立ちの立ち居振る舞いなど、他の大人の負け犬にも負けず劣らずの存在感です。
ハードボイルドであると同時に、ハードボイルド映画へのオマージュやパロディ的側面も持っています。オマージュやパロディであっても全く厭味がないし斜に構えている風もないし、受け狙いの厭らしさもありません。もうこれは作った人たちの人柄としか思えないですよ。
「真夜中の虹」と「浮き雲」が二本入ってお得なDVD「トータルカウリスマキ 1」は現在入手困難。残念なことです。DVD BOXなどすごいプレミア価格です。駄目ですねそういう風潮。何やってんでしょうか。