「シャロウ・グレイヴ」「トレインスポッティング」で脚光を浴び、一躍時の人となったダニー・ボイル。さっそくハリウッドに呼ばれたが世界の大メジャー娯楽産業界でトチ狂い、せっかくの個性が台無しになって飼い殺し(よくあること)、泣きながらイギリスに戻って「28日後…」を作ったらこれが大ヒット、その後はまたイギリスでがんばるぞ、といくつかの(変な)映画を作っていた挙げ句の果てにインド映画へのオマージュ「スラムドッグ$ミリオネア」を完成させました。
蓋を開けたらこの映画、アカデミー、ゴールデン・グローブをはじめ世界中で色んな映画賞をかっさらい、観客は動員しまくり、見た人は喜びまくり、とんでもない大ヒットとなりました。
すごいぜ僕らのダニー・ボイル。
さて「スラムドッグ$ミリオネア」はみんな観たから解説は不要ですがちょっとだけ。
この映画は前半と後半に別れていて、前半が子供時代からの生い立ち、後半が華やかな青年時代のテレビ出演と尋問と落ちになってます。
前半のインドでの生い立ちは映像美とリズム感と子役の素晴らしさとインドの風俗とスピード感がちりばめられ、リアルなタッチでしっかり描いています。
後半はそれを踏まえての活躍とドキドキハラハラと派手な行動と明るさと活劇をファンタジーの技法を使って娯楽作品らしく仕上げます。
エンドクレジットではカーテンコール代わりのダンスシーンが用意され「おつかれさまでした!」と打ち上げ気分を伝えます。
つまり前半と後半とエンディングを足すと、あらゆる映画のすべての要素が全部詰まっていることがわかります。つまりインド映画の文法です。
やりましたね、僕らのダニー・ボイル。
私は個人的に前半のリアルかつスタイリッシュかつ辛くてきつい子供時代が大好きです。クイズ番組とか恋愛ファンタジーは正直どうでもいいのですがそれはまあそれで観る人によって「ボクはあのあたりのシーンが好き」「あたしは後半のあのシーンが好き」「わしはベンツを壊すところが好きじゃ」と、様々でありまして、これがまた映画を観る観客の本来の姿でもあるわけですね。ビバ。映画。
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