「ムカデ人間」は全く期待せずに観たら面白かったんです。で、「ムカデ人間2」のトレイラーを見ますと、その設定がたいそう私好みのメタ・テイスト。だから今度はわくわくしながら観に行ったんですが。
1は気違い外科医がムカデ人間を作る話でした。2はその「ムカデ人間」という映画にハマり狂ったまさに気違いがムカデ博士の真似をしようとします。1で登場した女優さんも「ムカデ人間に出演した女優」として出演しているという、そういうちょっとメタっぽい設定ですから「なるほどそう来たか」ととても気に入りました。
「ムカデ人間」を観たときはてっきりレクター博士やジグソーみたいに、ムカデ博士が主人公のシリーズと思い込んでいたんで、よい意味でそれを裏切られたわけです。
てなわけですから、今回もいい予想の裏切り方をきっとしてくれるだろうなあなんて思ったのが大間違い。
今回の売りは「ムカデ人間」大ファンの気違い男です。この男、Laurence R. Harvey という人が演じてるんですが、まあ凄いのなんの。この人の個性だけで一本の映画を作ってます。あきれかえるほど面白いキャラクターです。
ですがそこまででした。
ただそれだけです。
この男は駐車場に勤めていて、そこで人間を狩って12人のムカデ人間を作ろうとします。もちろん医学の知識も技術もなにもありません。それどころか基本的に人間としてのその、ナニがちょっとアレでして、たいへんな困った男です。そういう男が乱暴にムカデ人間を作るという、その面白さただ一点のみに注力した作品になってしまいました。
単に人を狩って倉庫にぶち込み、ある程度人数がそろったら手術、で、一悶着、ちゃんちゃん。おしまいです。筋の運びも一直線、捻りのないストレートなお話です。意外な展開などはいっさいありません。で、本作の目的はまさにそこにあるようです。
気持ち悪い男がグロの限りを尽くします。そういう描写を「待ってました」と喜ぶ人にとっては至福の時間が過ごせるでしょう。
グロ残虐は「おおーっ」って感じで面白いのですが、だだし、カナダの問題映画「大脳分裂」ほどグロさとアート加減でぶっ飛んでおらず、「屋敷女」ほど恐怖はありません。
期待しすぎたこちらが悪いのですが「あらそうですか、お疲れ様」みたいな感じですいません、後半はすっかり飽きてしまいました。陰茎をサンドペーパーで擦るとか、そういう面白いネタはいくつかあったものの、最後の最後にキモ男が行うある犯罪行為が説得力0で一気に冷めます。観た人の多くもきっとこの男のあまりにも普通の男としてのあの性犯罪のシーンにがっかりしたのではないでしょうか。いろいろ面白かったし悪くない映画ですが、最後のあれだけは「ムカデ人間」シリーズの脚本として失敗であるとここに断言しておきたいと思います。
「ムカデ人間」シリーズは最初から3部作で、3は来年公開目指して制作中だそうです。この3に世界一のキモ男ローレンス・R・ハーヴィーが引き続き出演するそうです。引き続きますか。どうなんでしょう。3では完結編としてどうするんでしょうね。
2の単調な作風がそのまま3の伏線になっていて、また凝った作りになってくれるのなら嬉しいんですが、まああまり期待せずに待ちましょう。
ここでちょっとだけ日和っておきますが、一本調子の単調なこの作品、決して悪くはないですよ。
それなりに面白いのは面白いです。一本調子でだらだらしてて飽きてくることを除けば。
また、この映画をおもしろがる人を決して貶めません。おもしろがる人の気持ちは痛いほどわかりますし、全然問題ありません。ま、見苦しいのでこれ以上日和るのはやめときましょう。
ローレンス・R・ハーヴェイについてです。公式サイトによると68年生まれのイギリス人。見た目の通り、アート&パフォーマンス系の人だそうですね。本作のキモ男を演じるにあたり、柴田剛監督の「おそいひと」を参考にしたそうです。あっ。「おそいひと」観たかった映画です。見損ねてます。
英国のこども向けテレビシリーズにも出演して子供たちからの人気を博していたそうです。あらまあ。もう子供たちに顔向けできないすねえ。どうしましょ。その分、新たなファンを生んで成功してほしいと思いますがどうでしょうね。