伊丹十三のねちっこさが大いに発揮された食の映画。食、欲、性、生死をハードボイルドなニューシネマな技法で描きます。作風としてはだからエンターテインメント性の強いこの後の作品よりも幾分前衛的です。1985年頃と言えばバブルの開始時期、この頃はインテリブームまっさかりで、雑誌ごときがシュルレアリスム特集をやったり下町のピンク映画館がゴダールやタルコフスキー特集を組んだりという珍妙なことが流行する浮かれた時代でした。だからタンポポのやや実験的な技法もすんなり受け入れられることができたし、その上でオムレツやラーメンの作り方をはじめディティールへのこだわりや娯楽性もきちんと受け入れられたのだろうと思います。
口は顔に付いている性器であり、食事は人に見せる逆うんこである、と同時に欲望の原点で愛の始まりでもあり動物の基本であり人間の文化でもある。ということが非常によく伝わる映画です。
2006.02.07