「ジェヴォーダンの獣」はとても面白かったけど、「サイレントヒル」は残念な仕上がりでした。CGは凄いです。でもただ凄いだけですので、だんだん飽きてきます。仕舞いには「はいはいまた出ましたね」みたいな投げやりな気持ちになってきます。
ゲームが原作らしく、まったくもってゲームっぽい映画でした。薄っぺらで都合良くホイホイとアイテムやヒントを見つけて進んでいきます。
プレイヤーが自分の分身を操作し、何度も失敗しては試したあげくに正解を見つけてじっとり進む実際のゲームプレイと異なり、正解だけをつなぎ合わせたような物語を映画で見せられてもちっとも楽しくありません。
でも逆説的にゲームっぽいところが面白さに繋がっているところもあります。簡単に正解アイテムを見つけて作り手の思惑通りに進む主人公を見て、ゲームをやってる雰囲気をちょっと味わえるわけです。
娘を探しているはずなのになぜか誰もいない部屋に立ち入り、引き出しの鍵を探して懐中電灯を手に入れたりします。
これ、本来ゲームプレイだったらがむしゃらに進んで、そんで詰まって、引き返して改めて電灯アイテムを探す、っていうふうになるところですね。正解だけをストーリーに組み込むと変なお話になりますがゲームと思えば「正解だけのシーンの連続」と合点できるんです。
マップを頼りに進み、ラスボスの部屋の直前には中ボスが現れます。この中ボス、「ゼルダの伝説」のどれかに出てきた幽霊とそっくりですよね。動きを止めてやり過ごすしかありません。動かれたら仕舞いです。ドキドキします。ゲーム的な意味で。
というわけでこの映画、大したことのない映画ですが、これを見終わるとゲームがしたくなります。
クリストフ・ガンズ監督は原作のゲームが大好きだそうで、映画化にあたってはコナミにプロモーション映像を送りつけて売り込んだのだとか。
原作が好きすぎると忠実にしようとするあまり映画として面白くなくなったりします。そういうのの典型かもしれません。でももともとただのゲームなんだから、ストーリーがさほど面白いわけでもなく、ゲームの映画化というもの自体の問題を内包していると思います。
ゲームの映画化ではないですが、ゲーム的な映画という括りでは「ミッション8ミニッツ」が面白いですね。ゲームプレイのトライアンドエラーをストーリーとしてやってしまうという、まさにゲーム的な映画でした。
この映画の最大の欠点は脚本です。もっと細かく言うとセリフです。この映画の薄っぺらなセリフには呆れます。
「何?」「見せて」「これを見て」「ありがと」「何なの」「何で・・」「どういうこと」
こんなんばっかりです。下手な漫画以下、新幹線小説のセリフのようです。言葉に何の力も宿っておらず、必然もありません。押しつけがましい母と子の言葉もあまりにも軽々しいです。
それからこの映画は構成的な問題点を含んでいます。この世とあの世みたいなお話なんですが、あの世では荒唐無稽なことが起こります。何でもありです。この「何でもあり」がすぐさま飽きに繋がります。荒唐無稽な部分はCGの威力もあっていくらでも何でも出来ますしやり放題です。
その分リアリズムパートはリアルの基礎が全くできておらず悲しいほどに稚拙です。秘密公文書を見つけて読むところなんか哀れすぎてずっこけます。
ゲームならではの特徴も感じます。変な宗教団体の扱いです。まるで子供が空想して描いたかの如き設定で、こういった会社や宗教の描き方はいつの間にか定番になっているようです。むかしなら「マンガっぽい」と揶揄されたでしょうが、今では「いかにもゲームっぽい」と揶揄されます。
これらは脚本の悪さであり、映画の根本は脚本にありますから、いくら映像がカッコ良くても中身スカスカでは迫るところがありません。
とはいいながら私自身も若い頃は「映像さえ良ければ脚本や演技などどうでもいい」とか「リアリズムなんかに興味ないできる限り荒唐無稽なほうが好き」なんて思っていた口ですから、若い子向けのこうした映画を嫌ったり貶したりする気は毛頭ありません。
「ジェヴォーダンの獣」も「サイレントヒル」も、どちらも若年層向けのお話で定番登場人物たちの定番活躍を描きますが、素直に楽しめた「ジェヴォーダン」とくらべて「サイレントヒル」は何だかまったく乗り切れませんでした。自分でもわかっていますが、プレステっぽいこの手があまり好きではないってのも大きいです。全く好き嫌いの話です。
いまさっきWikipediaを見たんですが、登場クリーチャーたちの説明とか載ってて「黒い裂け目から毒液を噴射して攻撃する」なんて記述も見られます。
そうかー。何だかんだいっても、子供向けの怪獣映画みたいなもんだったのかー、と納得。一見大人向けに見せかけた子供の背伸び系の作品だったんですよね。
文句言ってないで、普通に怪獣映画として楽しむのがよかったようです。見方を間違えました。そういう意味では悪くないです。
派手なモンスターたちがわーわー出てきてそれなりに楽しめます。
ラストも哀愁漂ういいオチですよ。「母子像」(筒井康隆)を思い出します。
あ、そういえばこの映画、これ「母子像」みたいに、この世のほうをメインにドラマ化したら渋く哀しく良い映画になったかもしれませんね。
ちょっと貶した感想文みたいになってしまいましたが悪意はありません。それなりの客層ならそれなりに楽しめると思います。まるでアホみたいなくっだらない映画というわけでもありません。せいぜいいろいろ惜しかったな、ってところです。
でも一番残念だったのは期待のジョデル・フェルランドの壮絶演技力が堪能できなかったところでした。
でもその代わりデボラ・カーラ・アンガーが出てきて驚いた。