高層ホテルから飛び降りようとしている男は駆けつけた警察に交渉人を指名します。指名した説得担当の交渉人は、先日交渉に失敗して自殺者を出したばかりの女刑事マーサ。
飛び降りようとする男の素性と動機を女刑事マーサが探ります。もちろん観客も一緒に探ります。探るのは簡単です。ちゃんと映画が時間をさかのぼって「なぜこうなったか」を描いてくれます。そしてそれがそのまま映画本編であり、実際に飛び降りる寸前の緊迫した時間と空間のパートと、この男の生い立ちのパート、今まさに彼がやろうとしているパートが描かれます。
シチュエーションスリラーかと思える状況です。自殺するのか、なぜそうするのか、自殺しないのか、では何が目的なのか、そんな感じです。
スリリングでミステリアス。飛び降りのドキドキと「何故」のミステリーが同時進行します。
序盤しばらくはシリアスなシチュエーションスリラーかと思わせるというのもひとつのトリックかもしれません。こういったミステリー要素を含む物語は、冒頭の設定以外何も情報を得ずに素直に楽しむのが秘訣です。
まあ、何と言いましょうか。普通に楽しい娯楽作品です。スリルとミステリーで進行しつつ、徐々にアクション要素が加わってきたりして、だんだん簡単な話に収束してきます。深刻に見る必要はありません。「おー。こうなってきたかー」って感じで素直に身を任せます。
結構気に入った要素があって、ひとつは交渉人女刑事マーサ(エリザベス・バンクス)のちょっと可愛くてほどよくおばちゃんぽい人柄の部分です。いえいえ実際はおばちゃんなんかじゃないんですけどね。なんとなくちょっと人柄よさそうな感じが良いおばちゃんって感じで。それから、弟の彼女アンジー(ジェネシス・ロドリゲス)のラテンキャラクターなんかもいい感じです。怒ったらスペイン語が飛び出たりします。お色気サービスもちょっとあります。こうしたコミカルな要素は外せませんね。
パーフェクトな計画を進行中なのに突然自信を失い「あたし出来ない」なんて言い出したりして、そしたら「頑張れ。みんなが応援しているぞ」って励まして聴衆の歓声を電話越しに聞かせるんですね、そしたらそれを聞いて元気が出て「あたし頑張る」ってなるシーンなんかもありまして、こういったアホみたいな面白い展開が随所に挟まれていて、ほどよく気が抜けてていい感じです。
時々出てきて最重要な役割を果たすおじさんもカッコいいです。
つまり、あれです。キャラクターたちがわりといい感じなので、嫌みなく楽しめるんですよこの映画。
大作というわけでもないけれど、明らかなB級アクションってわけでもない、多分アメリカでたくさん作られているそれなりのタイプの映画のひとつです。
序盤がわりとよく出来ているので、最後のほうのB級アクションっぽい娯楽展開に「なんだこりゃ」とかがっかり思う人もいるかもしれませんが、まあ、おおらかな気持ちで。
あと私、高所が怖い症なので、高所シーンは作り手の狙い通りかなりくらくらしました。むかしボアダムズのヨシミちゃんがこうした状況のことを「尻の穴がじーんとするんじゃー」って言ってたことがあっていまだにその言葉の影響から逃れられず「尻の穴がじーんとするほどくらくらするんじゃー」って思ったりします。
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