ものすごくどうでもいい話ですが、このポスターを見ると、ナタリー・ポートマンがエリック・バナで、エリック・バナがナタリー・ポートマンであるかのように見えますね。
スカーレット・ヨハンソンの場所が合っているだけに変さが剥き出しになっております。映画ポスターではこういうのよくあります。これ見てると自然に笑いがこみ上げます。
国王に男の子が生まれない世継ぎ問題を聞きつけて、よしそれでは娘を妾にして男の子を産ませてやろうと、のし上がり系貴族ブーリン家の親父は長女アンに「おいお前、国王が来るから愛想振りまいて気に入られて妾になって男の子を産め」と命じます。美女を自覚している姉アンは「了解!」と張り切るものの、国王が気に入ったのは妹のメアリーのほう。妹メアリーは慎ましく結婚生活を送りたい優しい美人新妻なのでして、王の妾は厭です。でも厭厭言うわけにもいかず国王に呼ばれていくんですね。姉はむっとします。
と、このような国王の妾のお話で、史実です。実話というと微妙らしくて、諸説入り乱れているこの歴史的スキャンダルを小説化したフィリッパ・グレゴリーの「ブーリン家の姉妹」の映画化、という感じらしいです。
映画を見終えてから、面白かったのでこのスキャンダルの歴史をちょっとだけwikiで見ましたが、どれが本当のことかは微妙にわかりませんね。書く人によっていろんな見方や解釈があるようです。
そういえば「王妃マルゴ」のマルゴも大概な人物として歴史に残っていますが、アン・ブーリンといいマルゴといい、こういった黒い話が世界中のみんなが好きなんですねえ。
なんにしろ有名な歴史的大スキャンダルですが、私はこのようなことは今の今までまったく何も知りませんでしたので、普通に映画として大いに楽しみました。
というのもそもそも「ブーリン家の姉妹」をなぜ見たかというと、一にアナ・トレントが出てるから、二にナタリー・ポートマンが出てるから、三にスカーレット・ヨハンソンが出てるからと、そういう、まるで国王が妾を物色するかのようなスケベ心が動機でありまして、観る前はアナとナタリーとスカーレットの三姉妹の話かと思っていたほどです(アナ・トレントは王妃の役でした)
でもカバーアートを見る限り、ナタリーとスカーレットとエリックの三姉妹の映画みたいに見えますね。ひとり髭の妹が混じってますけど。
映画が始まってしばらくは内容がまだよく判っておらず、16世紀の建物や貴族の洋服や動きなんかを見て、これがもうモンティパイソンにしか見えず、「イギリスの歴史物を見たらモンティパイソンにしか見えない」という、物事がよくわかっていない時期に脳味噌にこびりつき染みついた心の傷をまたしても痛感することになりました。カメラは広角系だし、貴族の間抜けな恰好や振る舞いを見ているだけで笑いそうになるわけですが、もちろん笑う映画ではありません。
人によっては、王朝の恰好を見るだけで少女漫画を思い出す人もいるかもしれませんね。まあ何にしろ私たちは底の浅い人間でして、他国の歴史に対して割と変な刷り込みがなされていたりしがちです。私たちと言うなお前だけだですって。はいそのとおりでした。
歴史物ですが最近の映画のせいなのかどうなのか、とてもポップです。会話は現代的だし、展開もてきぱきしてるし、構図もいいし美女もいい。このポップさに最初ちょっと違和感を感じましたが、結局は何の問題もありません。いやむしろドラマとしていい。映画を見終わって、わりと「おおお」と思いますし、心掻き毟られ系でさえあります。
ポップさの違和感ですが、端的に言うとテレビドラマっぽい感じです。セットも豪華、衣装も豪華、カメラアングルもいいのですが、そこはかとなく漂うテレビ的印象がどこから来るのか、監督の特徴なのか、テレビ局が作った映画だからか、よくわかりません。と、思っていたら、誰かが「フィルムを使わずデジタル撮影」と書いていたのを見かけました。あーなるほど、それでか、と納得しましたが確認したり裏取ったわけではないのでこれ以上は踏み込みません。
で、結局どうなのかというと、この作品かなりの面白さで、主演二人の美人女優夢の共演は色物に見えて実際は相乗効果抜群の大成功です。ナタリー・ポートマンの演技にいたっては、今まで見くびっていてすいませんでしたというレベルで、たった一言のセリフにも複雑で多様な感情を込めます。
全体的にポップで現代的な台詞回しであるにもかかわらず単純化していないのが優れたところであると思いました。つまり脚本がいいんです。その上、役者が上手いんです。そして演出が上手なんです。なんだ全部いいんじゃん。
脚本がいいのも当たり前、ピーター・モーガンて誰だろうと思ったら「ラストキング・オブ・スコットランド」や「フロスト×ニクソン」「ヒアアフター」じゃないですか。「裏切りのサーカス」では制作総指揮です。さすがの腕前です。
監督は「ブーリン家の姉妹」のあと「おじいさんと草原の小学校」を撮ったジャスティン・チャドウィックです。ポップで見やすい演出をされる方ですね。史劇や社会派のような、どろどろしがちな作品をカラッとポップにテレビドラマ的に、どなたにも見やすく伝えやすく演出するというのは、これはこれで大事なことだと思います。ひとによっては「重厚感がない」などと言うかもしれませんが、重厚感など求めていないという人にはそのほうがよかったりします。
「ブーリン家の姉妹」はアンとメアリーの二人ですがじつは三兄弟でして、弟ジョージってのがおります(髭のエリックとは別の人ですよ)始終地味な存在で、存在感も弟くんって感じのほどよい弱さと緩さと薄さに包まれています。タイトルにも含めてもらえず、ポスターにも載せてもらえません。光が当たらない弟ジョージ。にもかかわらず最後あんなことになって、ジョージくん可哀想すぎてたいへんです。ジョージくんをぜひしっかり見ておいてあげてください。
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