本当はエロいグリム童話~ RED SWORD レッド・スウォード

本当はエロいグリム童話~ RED SWORD レッド・スウォード
古来からの異形の一族である狗神と、その狗神退治の宿命を背負って生まれた赤ずきん赤月紅子の死闘が繰り広げられます。友松直之監督による本当はエロいビデオ作品。
本当はエロいグリム童話~ RED SWORD レッド・スウォード

しまった。観てしまった。こないだ「レイプゾンビ」観たばかりなのに。

レイプゾンビ」とその主題歌が気に入ってわーわー言うていたすぐ直後、イベントで一緒だったアリスセイラーにみんなのサインが入ったポスターを頂きまして、それでさらに気をよくしてわーわー言うてたんですね。ついでに、演技と立ち回りが上手くて一人目立っていた亜紗美さんを褒めていると、アリスセイラーが「亜紗美さんが主演の『本当はエロいグリム童話』も面白いで。私あれ好きやねん。曲も歌ってるし」ということで教えてもらい、この作品を知りました。

こちらのテーマ曲「赤ずきんちゃんSOS」も可愛くていい曲です。「RED SWORD」どころか友松監督作品のことを全く知らないときから、アリスセイラーのライブでいつも聴いていたお馴染みの曲でした。
「あっ。いつもやっていた赤ずきんちゃんのあの曲かっ。あれも映画の曲やったのね」と、改めて知りまして、それでこれは観とかないといけないということで、観ました。

「~本当はエロいグリム童話~ RED SWORD レッド・スウォード」という長ったらしいタイトルのこの作品、観る前は覚悟と安心の両方がありました。
ある程度の覚悟で身構える部分と、主演の亜紗美さんに対する安心感です。

低予算映画やインディーズは好きですが、普通とは桁の違う低予算映画独特の、その、ナニがどうしてもあります。そのナニに目をつぶってこそ楽しめるアレもありますんで、ナニとかアレとか奥歯の虫歯みたいな言い方ですが、つまり物事にはソレにふさわしいナニとかアレとか、そういうのがあるんです。だからいいのです。

さて「RED SWORD」ですが、覚悟に反して実に面白かったんです。いやほんと。また日和ったなと思われそうですが、それが事実としても面白いです。
まず何といっても今回は画面がいいんです。「レイプゾンビ」はむきだしのビデオ画質でしたが、こっちはちゃんとした色調で整えられています。フィルム映画の色調に近い本作の処理は、もうそれだけで「ちゃんとした感」がぐっと上がって作品全体の印象をアップさせます。前回、「テレビドラマらしい」「映画らしい」という件について奥歯に青虫が挟まったような言い方をしましたが、そのひとつがこの色調処理です。
ビデオで撮影して完成したものをフィルムで撮影するとか、コンピュータ処理で全体の色調をいじるとか、技術的なことはよくわかりませんが、最終的な作品の形態としてとても重要だと思います。

最近観たホラーで「SHOT/ショット」という映画があるんですが、あれなんかは低予算にもほどがあって、なんと撮影機材はデジカメのムービー機能というではありませんか。家庭用ビデオカメラですらないという、そんなので撮影してるのにですよ、完成した作品の何と深みのあることか。ああいう工夫は、やっぱり必要なんだなーと、私は思うんであります。でも低予算って言っても、日本のビデオ映画作るのとは比較にならないんだろうなあ。友松監督のブログとか見てると驚きますものねえ。

亜紗美さんが赤ずきん・赤月紅子という役で登場、狼男である狗神を退治するヒーローです。今作では高校を舞台に、教室や屋上での大立ち回りが用意されています。
この立ち回りシーンはかなり立派です。比較的長回しでもきっちり戦い抜きますし、型も綺麗です。アクションシーンだけ見ていると一瞬低予算映画と言うことを忘れます。アクションの立ち回りシーンはかなり楽しめるでしょう。

そして本作で最も面白い部分は蘊蓄(うんちく)や説明的な語りのシーンです。そういえば「レイプゾンビ」でも、オタクの男が語る神々の蘊蓄シーンはたいそう面白くて、何て素晴らしいアイデアなんだろう思いましたが、本作ではその部分がさらに私好みの良いシーンとなってパワーアップしていました。

この、登場人物が突如語り出す歴史の蘊蓄や説明的なセリフシーン、劇中解説をあえてドラマの中に違和感たっぷりに含ませるのは異化効果として成功しています。
異化効果はもともとは演劇理論の用語ですが、見慣れない表現を用いて未知なるものに変えてしまう技法や趣向のことです。上手に使えば観客は驚きを感じて立ち止まるわけです。ブレヒト的には、単純な感情移入から観客を引っぺがし、批判的観察を可能とする技法として適用しましたが、まさにそれが「RED SWORD」の解説シーンで起きています。

高校教師が突然語り出す神々の物語を始め、「赤ずきんちゃん」を読む校長、戦いの最中にも突然解説を語り出す紅子と、いろいろな場面でこの効果を発揮した「語り」シーンが用意されています。これらのシーンはどれもオタク的かつ文芸的ですらありまして、映画内「言葉」シーンとして浮きまくっており、効果を上げています。こういうの大好きです。園子温監督作品の例の強力な言葉シーンにも根っこで通じる部分があります。ここまで来れば同時代性を感じ取ってもいいくらいです。
この「言葉」の路線には今後も期待したいと思います。

というわけで、長すぎるエロシーンでちょっと疲れはしたものの、いやこんなこと言うと一所懸命エロった女優さんにも申し訳ないのですが、でもやっぱりソレ目的の人と違い、アレばかりしつこくてもやっぱりその、ナニでございまして。すいません。で、全体に思いの外面白くて、そしてお待ちかね最後のアイドル歌謡コーナーで盛り上がり、大満足したわけなのでありました。

主題歌「赤ずきんちゃんSOS」を歌っているのはアリスセイラーの妹で二代目襲名の佐藤薫博士が作ったアンドロイドであるぴいち姫です。
youtubeでは「赤ずきんちゃんSOS!」でぴいち姫のライブ映像が、「本当はエロいグリム童話〜レッド・スウォード 予告ダンス編」で本作予告編が検索できます。ぜひどうぞ(そういうのが好きな人のみお願いします)

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