いわゆるバンドもののドキュメンタリー。ヨーロッパ・ツアーを中心に、楽屋や移動の様子、メンバー各々の生い立ちやちょっとした打ち合わせ風景なども織り交ぜます。
ノー・スモーキング・オーケストラという名前がどのように付けられたかの由来は全く知りませんがメンバーはもちろん煙草吸いまくりの真っ当なアーティストたちです。ご安心を。
ふざけあったりだらだらしたり、バンドマンたちの特徴は世界共通、ただしとてつもない実力を持つこの方たち、いくらふざけ合っていても説得力が違います。
もっと音楽を演奏しているシーンがたくさんある映画かと思っていたのですが、思いの外演奏シーンが少なくて、純粋に音楽を堪能したい人は「もうそのシーンはいいから演奏見せろっ」って言いたくなるかもしれません。あくまで、バンドとメンバーのドキュメンタリー映画なんですね。「ストップ・メイキング・センス」や「トータル・バラライカ・ショー」とは違うんですよ。ちゃんとクストリッツァ映画ならではの喧噪と混沌がこの映画にはあります。
音楽家ならはっとする打ち合わせ風景も見逃してはなりません。私は普段いいかげんな音楽をやっているので、あのドラムとドラム、ギターとギターの綿密なやりとりに感動しました。普段いい加減に演奏していますが、ほんとうはあのくらいきっちり曲を作ってるんですよ。やってるメンバーは知らないと思うけど。キックの音がどことどこ、リズムのアクセントはここ。そうやって細かく決めていくことが「曲を構築していく」ことにほかなりません。ここをおろそかにして曲は仕上がりません。
さてノー・スモーキング・オーケストラですが、1980年代にネレ・カライリチを中心に結成されたサラエボのバンドで、最初はパンクロック系でブレイクしたものの、チトー政権を批判して活動休止。
86年にエミール・クストリッツァがギタリストとして参加してまた人気が出ましたが、監督忙しいし、ボスニア紛争で治安は悪化するしで、今度は本格的に解散状態となったそうです。
その後は98年の「黒猫・白猫」で音楽を担当し、音楽性もバルカン半島の音楽を存分に取り入れたミクスチャー・サウンドへと大変身、世界で評価されるようになりました。
現在は「エミール・クストリッツァ&ノー・スモーキング・オーケストラ」に名前を変えています。
主な作品は
・「黒猫・白猫」のサウンドトラック
・Unza Unza Time
・「ライフ・イズ・ミラクル」のサウンドトラック
・Live Is A Miracle In Buenos Aires(ブエノスアイレスでのライブ盤)
・「ジプシーのとき」(2007年セルフリメイク)のサウンドトラック
ウェブサイト TNSO/ Emir Kusturica & The No Smoking Orchestra
「Super 8」ではミュージックビデオ的音楽短編「Unza Unza Time」の撮影風景なんかも交えていて、完成したものも見ることが出来ます。公式サイトやYouTubeにも出ていますので、ここにも貼っておきます。ノー・スモーキング・オーケストラを知らない人は、こんな感じの音楽だということを見てみるのもいいかと思います。この音楽にぐっとくれば「Super 8」は面白いです。もちろん私はぐっときまくりです。