カナダのケベック州はフランス語です。本国のフランス語と僅かにイントネーションが違っていて、なかなか味わいがありますね。
ケベック州のどこでしょうか、舞台はどこか果ての島です。とても景色の綺麗なところです。寒そうです。凍てつきます。
かつては漁業で栄え勇ましい漁師の島であったようですが、今では漁は行われず寂れきっています。島に残るのは老人とやる気のない人ばかり。全員が生活保護で暮らしています。島から出ていく人も後を絶ちません。
そんな田舎の島に、プラスチック工場の誘致話が持ち掛かりまして、これで仕事が得られると島民喜びますが、工場建設には定住する医師が必要ということで「こりゃ駄目だ」となります。「こんな辺境の島に住んでくれる医者などいるわけない」
そこで諦めずおじさんがんばります。住んでくれる医者を見つけようというわけです。
で、その作戦ですが、まずどうにかして医者を島に連れてくる。その医者に「ここに住みたい」と思わせるよう、島民ががんばって演出、つまり騙くらかそうということになります。
いい人になりすまし、お金を拾わせ、医者が好きなスポーツが盛んだと思わせ、あの手この手で「素朴で楽しく現代的で素晴らしい島」をでっちあげます。
医者に気に入られるためのだましのテクニックの中には、人情に訴えかけるようなのや、嫉妬心をくすぐるような姑息な作戦が頻出します。ちょっとひどいんです。盗聴するわ「息子が生きてりゃ君ぐらいだ」とか言うわ、わりと人の心をもてあそぶ心ハンター系の心理テクニックを駆使します。このひどさがちょっとした毒となって「大いなる休暇」を単なるほのぼのさわやか映画で終わらせないポイントとなります
それにしても騙されるお医者の青年可哀想。あまりにも哀れです。
「大いなる休暇」という邦題やDVDカバーアートのデザインを見ると、ほのぼのさわやかのんびり路線に見えますが、ブラックで酷い部分や間抜けさも持っていてファンタジックでさえあり、実に良い作品となっております。
本国のチラシはこんなんですか。これもまあ、なんか感動的で雄大な大作映画に見えますが、よく見たら下の写真の連中、ちょっとおかしいし、ミスリードを狙った受け狙いのデザインと見ることができますね。こっちのほうが面白いデザインです。
生活保護に関して、ただいまどこぞの発狂国家ではごく少数の不正受給なんかの話を無理矢理盛り上げて翼賛馬鹿を釣り上げ同調させ悪政に誘導ようとしております。この映画でも生活保護を受けている島民を描きますが、生活保護対象を差別的に見るとか妬むとか制度そのものを縮小させようとか、そういう下品で下等で厭らしい気色の悪い発想は微塵もありません。当たり前ですが。時事ネタを放り込んでおきました。
(追記ですが数年後、悪政への誘導が功を奏し社会福祉費用はガタガタに削り取られてしまいました。この流れは今後も続く模様です)
主演のおじさんはレイモン・ブシャールというなかなか味わいあるおじさんです。優しい顔や仏頂面がびしっと決まってます。
おじさんおばさんや年寄りが多く登場するこの映画にはどういうわけかヒロインがおります。島民ではなく公務員らしいこの孤独なヒロイン、この役が面白いです。変なやつで浮きまくってます。
ちょっと顔きつめのこの美女を演じているのがリュシー・ロリエとかルーシー・ローリアとか呼ばれている女優さんで、おっさんおばはん年寄りの中でやたらきらきら輝いております。お得ですね。ELLEの表紙になっていたりします。
いえ、こんなシーンはありませんよ。これはIMDbに載ってたブロマイド。