当サイトでは最近観たり再見した映画だけを記事にしていますが、何故かどういうわけか仕事中にふと「顔」のことを思い出して止まらなくなったので紹介してみます。
藤山寛美大師匠の娘である藤山直美が主演の「顔」は、阪本順治監督による2000年の作品です。
20世紀末ごろにワイドショーを賑わせた福田和子の事件をヒントにした犯罪者の逃亡ロードムービーで、いい歳過ぎてごろごろだらだらしている引き籠もりの駄目人間が殺人を犯してしまいそのまま逃避行するという旅の物語です。
行く先々でいろんな人にであい、いろんなことがあったりして、藤山直美が状況に応じて豹変していきます。
むさ苦しい駄目人間、やってもうた殺人犯、面白いおばはん、キラキラ輝く乙女、旅の孤独女、水商売のけばい女、いろんなタイプにジャガーチェンジします。その時々の表情、これがタイトルの「顔」ってことだと思います。
どうしようもなく駄目な人間だった主人公が、逃亡によって人間味を増し生きる力を得ていく皮肉な展開です。
悲劇っぽいテーマですが、軽くコミカルな演出と演技でホイホイ見せてくれます。
技法的にはまさしくロードムービー。一カ所にとどまることなく逃亡の旅に出るわけで、脇を固める実力派、個性派の面々がエピソードを紡いでいきます。出演者たちの名を見るだけでそのチョイスにニタニタ笑いがこみあげてくる人もいるかもしれませんね。
「顔」は各方面から高評価で、国内のいろいろな受賞も果たしまして、そしてヒットしました。女優藤山直美も大注目され評価されましたね。人は血筋ではありませんが藤山寛美師匠の娘というだけで贔屓目に見てしまっていたものだから当時素直に喜んでました。
こんないい映画で主演を張ったんだから、さぞかし今後はいろんな映画で大活躍・・・と思ったんですがそれほどでもないんですよねえ。でもこの方は舞台もあるし、映画は主たる活躍の場ではないのかもしれません。
「顔」を観た当時「美女でもない大人の女が主人公、さらに反道徳的なものも許容する太っ腹映画」として私は大絶賛し、喝采を送っていました。
大人の映画が少なすぎるとずっと思ってましたからこれぞ快挙と思ったんですよね。
「顔」が評価されて10年以上が経ちましたが、これをきっかけに大人の日本映画が沢山作られたかどうかというと、どうなんでしょうね。やっぱり少ないような気がしますが。あまり知らないだけかな。