まあ何といいましょうか、お洒落で美しい映画です。ファッションデザイナーのトム・フォードが監督したとか、コリン・ファースが受賞したとか、そういうことを全く知らずたまたま偶然見てしまったのですが、見てる間中「なんと美しい」「まるでグラビア映画」と、洗練されたデザインセンスに驚愕しっぱなしでした。驚愕も当然、詳しくは知りませんがグッチやイヴ・サンローランのデザインで超有名な大物デザイナーです。
この映画の美しさは美術的な美しさではなくデザイン的な美しさなんですよね。
ですので、そういうのが鼻につく人ももしかしたらいるかもしれません。ものすごく悪く言うと「ミュージックビデオ的」という美しさですが、しかしたとえミュージックビデオ的であっても、その洗練され具合が半端じゃありません。まさに動くグラビアです。ここまでやれるとはさすが超大物ファッションデザイナー。
世界的な超大物デザイナーであっても「いつか映画を撮ってみたいの」と、映画に対して憧れがあるものなのでしょうか。
聞くところによると俳優を目指していたこともあるそうですが、そうでなくてもまず大抵の表現者は最終的には自分で映画を作ってみたいと思うものなんでしょう。俳優も技術者も作家も評論家もアーティストもミュージシャンもみんな映画を撮ることを人生の目標みたいに感じている節があります。最終的には自宅を抵当に入れても映画を撮り上げるなんて人も珍しくありません。
映画を見るのも癖になりますが、映画を作りたい症候群はさらなる麻薬なのでありましょう。気持ちはわかります。ものすごく。
で、世界的に成功したデザイナーが初監督したこの「シングルマン」は、皆の予想を裏切って映画的に大層優れた作品となりました。ちょっと思い返してみても未熟さや稚拙さが微塵もありません。ファッションデザイナーの初監督作品と言われなければ、誰もが名監督の作品だと思うことでしょう。完成度高いです。
数々の映画賞にノミネートされ、ヴェネツィア国際映画祭とインディペンデント・スピリット賞とサンフランシスコ映画批評家協会賞でそれぞれ男優賞(コリン・ファース)を獲得しました。
監督トム・フォードや助演女優ジュリアン・ムーアもよかったんですが、ノミネートに留まったようです。
さて内容ですが、愛する彼氏を失って失意のどん底にいる大学教授の孤独と絶望です。ご、ごめんなさい。私はマイノリティを支持する博愛主義者のリベラリストですが支持はしても生理的に受け付けないものもあります。
映像も美しく映画的に優れている作品だったのできちんと見ることが出来ましたが、もし単なるドラマだったら見るに耐えなかったかも。
私にとってはちょっと苦手なタイプのお話ですが、にもかかわらずこれほど面白く見ることができたってことは、如何に映画として優れていたかと思うわけです。
映像美しいですよねー。
ちょうどレビュー用に観なおしていたところでした。
音楽も結構ツボでした。
次回作が楽しみです。
戦争映画みたいに予想を裏切るようなものを取ってほしいです。
銀行で少女が現れるシーンやモノクロのデートシーン、卓上の小物シーンなど、目を見張る美しいシーンの連続でした。
今時は「映像が綺麗なだけの映画」とか言って貶める風潮もあるようですがここまで徹底してスタイリッシュだと見事というしかないですね。しかも「綺麗なだけ」ではないと思いますし。
トム・フォード、とんだ才能の持ち主でびっくりしました。