ちびっ子映画かと思ったら違っていまして、ちびっ子ヤンヤンはとても重要な役割でここぞという時に出てきますがあくまで端役です。ときどき出てきては皆を釘付けにする妙演技を披露、端役ですがインパクトはでかいです。
中心にある家族は父親、母親、お婆さん、娘ティンティン、息子ヤンヤンです。これに加えて父親の弟、弟の妻、弟の元カノ、隣に越してきた母と娘、その娘の恋人などいろんな人がいろんな立ち回りを演じます。群像劇風というか、単に「人々」というべきか、それぞれの人生の局面を切り貼りしたような構成で家族構成員を描きます。
ちょっとしたお話が次々に現れては切り替わっていくその構成に、これはある意味究極のホームドラマではないかという感覚を覚えます。
とくに中盤までの、誰が中心人物か明確にしないまま次々と現れては消えるエピソード群はたいへん面白いです。
個人的には後半の、父親の「青春を取り戻そうになった」件がくどくて少々うざかったりしましたが、そういった個人の好き嫌いも含めて様々なエピソードが用意されています。
シーンの繋ぎかたや撮影の見事さに唖然とします。何でもないシーンでも、懲りに凝ったカメラアングルやタイミングを取るのが難しそうな人と人の入れ替わりなど、どれほどリハを繰り返し丁寧に作っているのだろうと思いドキドキしてきます。長回しの妙技は厭味のない程度に長すぎずしつこすぎずドラマを邪魔しない丁度良い案配となっています。
特に印象に残るシーンもたくさんありました。
ヤンヤンが視聴覚室で空の映像と女生徒を見るシーン、ディンディンがお婆さんに語りかけるシーン、泣きの母親のロングショット、バーガーショップのシーンなどなど、力強い場面がそこかしこに散りばめられています。
エドワード・ヤンは「台湾ニューシネマ」を代表するひとりだそうで、上海生まれ台北育ち。電気工学を学び修士号を所得したのに映画に興味を持ちだしたという経歴とのことです。2007年に没しておられます。
本作「ヤンヤン 夏の思い出」が遺作となります。
2000年第53回カンヌ国際映画祭監督賞受賞。