この映画が公開されたときはまだ若干チビ助だったので見に行けず、後の「名探偵再登場」は前売り買って観に行ったんですが、その時から前作(別に続き物じゃないけど)であるところの「名探偵登場」に、悔しさの混じった憧れをずっと抱いていました。なんせほら、ピーター・セラーズとピーター・フォークが共演してるんですからね。当時ガキンチョだった身としては、1年前2年前なんて「大昔」の感覚。「名探偵再登場」を見て期待ほど面白くなく感じたこともあって、「昔やっていた『名探偵登場』は揺るぎない名作だったらしい」という確信と憧れを勝手に抱いていたという可愛い思い出です。
その頃は家庭用ビデオ機器なんてありませんから、名画座だけが頼りです。でもどうしても「名探偵登場」を見る機会はありませんでした。そうして時は流れ子供は大人になりおっさんになり、ハタとこのタイトルを思い出して「よし今こそ観てやる」と決意して観ることと相成りました。
そんな個人的思い入れなどどうでもいいのですが、どうしても期待に胸膨らませワクワクソワソワはやる気持ちを抑えきれません。
オープニングは超クールなアニメーションというかイラストというか飛び出す絵本というか、そういうものと音楽です。むかしの映画はオープニングがしっかりあってエンディングがさらりと短いのでして、クレジットなども主にオープニングで表示します。ピンクパンサーも007もオープニングが超クールでそれだけでぐいぐい引っ張りますもんね。そうそう、ちょっと前に観たポランスキーの「吸血鬼」も可愛いイラストのオープニングが印象深いのでした。
そんな系統の特徴的な飛び出すイラストと素敵な音楽のオープニングから始まって、謎の大富豪が各地の有名探偵に招待状を書いているところから本編スタート。
世界から集まった一癖も二癖もある探偵たち、その中で我らがピーター・フォークはチンピラ系の暑苦しい探偵です。コロンボしか知らない人は、あの日本語吹き替えの声と地味な立ち居振る舞いから渋めの俳優と思ってるかもしれませんが、この人、チンピラ風のイメージが強いです。「こわれゆく女」もそうだったでしょ。
ピーター・セラーズはお家芸の謎のアジア人探偵の役です。これはピンクパンサーシリーズが好きな人にはお馴染みの持ちネタですね。変で妙です。ピーター・セラーズが如何に味わい深い俳優であったか随分大人になるまで判りませんでした。「博士の異常な愛情」を名画座で見たときは驚きましたが、基本的にただのドタバタ俳優と思っていて、その深さに気づかなかったのですねえ。
とまあそんなこんなで、お屋敷で繰り広げられるハードボイルド・ミステリー、ときどき呆れるやら困ってしまうやらどうしていいかわからないやら、妙な展開を経て驚愕のラスト(笑)もあったりして、公開当時観ていたらひっくり返って楽しんだろうなあというちょっとした哀愁と共に複雑な気持ちで見終わりました。
ハードボイルドのパロディだからして、ファッションや立ち居振る舞いが皆カッコいいです。このカッコ良さは今の時代だからこそより一層カッコ良く思えるのかもしれません。あまり洒落てるとは思えませんが、カッコいい部分は確かにあります。
今、敢えてこの映画を観る価値があるのかと問われれば、それも複雑です。お好きな方はぜひどうぞとしか言えません。。。私は観てよかったですよ、もちろん。
2010.02.19 – 2011.04.07
“名探偵登場” への2件の返信