この映画を観たときにはまさかこの可愛らしいお嬢ちゃんがあんな目にあってあんなことした人とは全く気づきませんでした。「よし頑張るぞっ」とパリに出てきた陽気な小娘ギャルソンを演じるセシル・ドゥ・フランスです。そうです。まさかの「ハイテンション」です。いやあ。そうだったんですか。あなた、ハイテンションですか。やりますねえ。すごいですねえ。
あんな役やこんな役を演じきったこのお嬢ちゃんは、ベルギーの女優さんで「スパニッシュ・アパートメント」と「ロシアン・ドールズ」で女優賞を受賞した経歴の持ち主。1975年生まれ。あれあれ?お嬢ちゃんっていう年齢でもなかったのね。
それにしても「ハイテンション」でのあのテンション、生半可な女優じゃないとは思っていたけど、そうだったんですか。今はじめて知りました。
まああんな血だらけスプラッタ映画は置いとくとして、本作ではこの可愛い女の子が無理矢理バー・デ・デアトルのギャルソンになるところから始まり、店に集う様々な人たちの物語に興味を持ったりちょっかいを出したり、狂言回し的役割としてドラマを繋げます。
「モンテーニュ通りのカフェ」って邦題はいかにも系であっち系のウケ狙い系で、確かにカフェのお話が土台ですが、話の骨子はむしろすぐ傍にあるシャンゼリゼ劇場や隣接する劇場コメディ・エ・ストゥディオ・デ・シャンゼリゼ、そのまた隣接するオークション会場ドルオ=モンテーニュ、そしてホテル・プラザ=アテネにまつわる人々の物語であり、オリジナルタイトルも「Fauteuils d’orchestre」”オーケストラ席”です。日本でも最初「オーケストラ・シート」というタイトルで上映されました。オーケストラのいい席に座りたい人々の物語。基本、皮肉とアートが漂っているんです。
皮肉やアート感はあるけれど、あくまでも軽いタッチの群像劇として描くことで厭味がまったくない興味深くて面白い物語に仕上がっております。
そもそもカフェと言えば詩人や哲学者やアーティストが煙草を吹かしながらだらだらと議論したり芸術運動を起こしたり力を抜いて脱力したりする場所のイメージです。集うのはもともとけったいな連中です。近所の劇場関係者や大物たちの気を抜く様子はそれだけでもドラマになるんですねえ。
けったいな連中の間に入り、ちゃきちゃき動き回るギャルソンの設定も良いので、誰もが楽しく、時には真顔で、登場人物たちのそれぞれの物語に入り込めるでしょう。
パリ8区を舞台にした人情劇。この程よい感じはなかなかの逸品。
2009.06.01
[追記]カバーアートは「ぼくの大切なともだち」みたいな、ちょっとレトロなフランスっぽいイラストになってます。洒落てますね。再発して何かシリーズっぽい扱いにでもしたんでしょうか。
たしかに立場的にも「ぼくの大切なともだち」と似た位置にある映画ですね。小気味のいいコメディタッチの人情劇で、巨大スクリーンや大音響が必ずしも必要でない昔ながらの普通の良質ドラマです。悪く言えばテレビドラマ風ってところですが、そういう肩肘張らない系のドラマって言うのはある意味、映画本来の姿でもあるかもしれません。
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