リミッツ・オブ・コントロール

The Limits of Control
「スペイン語は話せますか?」男はNoと答える。スペイン意匠堪能型秘密指令ハードボイルドロードムービー。ジム・ジャームッシュの底力をまたも確認する羽目に。
リミッツ・オブ・コントロール

観るところが沢山詰まった贅沢至極な素晴らしい作品。ジム・ジャームッシュ先輩の久しぶりの作品は、秘密指令を携えた男がスペインの南部を舞台にあっちこっちへと移動、人の話を聞き、使命を果たす旅をするという映画です。

秘密指令はなんなのか、何の組織なのか、最終的に「自分を偉大な人間と思っている男を墓場に送ってやれ」という言葉の意味は。
うーむ。ハードボイルドでサスペンスでクライムな香り。あるいはウィリアム・バロウズな香り(タイトルはバロウズのエッセイからとのこと)
またあるいは「新宿コンフィデンシャル」です。

目的地へ移動するための乗り物、到着したらまず宿、そしてカフェです。彼は必ずエスプレッソを二つ注文します。ダブルではなく、二つのカップに二つのエスプレッソです。最初のカフェでの店員とのやりとりも面白く、店員自体もかわいいです。いいですね。

この二つのコーヒーに関するエピソード、主人公コードネーム孤独な男を演じるイザック・ド・バンコレの実話だそうです。これは面白すぎて「映画化決定!」とジム・ジャームッシュは叫んだことでしょう。

参考)ジム・ジャームッシュ監督が語りつくす!最新映画「リミッツ・オブ・コントロール」

この映画、アーティスティックで監督の複雑なあれこれが詰まった奥の深い文芸的な映画ですが、狙い通りかはたまた滲み出るのか、ジム・ジャームッシュの根っこにあるおとぼけや味わい深さが滲み出ていてほんわか感が消えません。
そこも含めてこの監督の魅力であります。

行く先々では主人公の仕事はひたすら伝令を待つことです。その間、美術、建築意匠、音楽などに身を投じます。ある場所では毎日美術館に出向き一点の作品を見つめ続け、ある場所では練習中のフラメンコに触れて芸術的興奮に身を委ねます。(フラメンコのシーンはほんと素晴らしい。思わず拍手をしそうになりました)
伝令との会話では、主に一方的に伝令の話を聞きます。映画の話、分子の話、ボヘミアンとボエームの話などなど。
スペインの街並み、建築がたっぷり堪能できます。ホテルや宿泊所の素晴らしい建築、凝った手摺や美しいタイル、スペインの建築意匠はまったくもって格別です。雑貨や小道具もいいですね。映画全編にみなぎる美と知の力です。美術に対する深い造詣が伝わります。
そして、すべての人にスペイン行きたい病が発症するでしょう。

伝令として登場する個性的な面々はすべてコードネームでキャスティングされています。映画中でももちろん全員名前はありません。

ではコードネームを持つ皆様を紹介してみましょう。

孤独な男

主人公です。イザック・ド・バンコレの寡黙ながら細かい仕草などの演技が光ります。「ナイト・オン・ザ・プラネット」はもう20年ほど前になるんですねえ。「マンダレイ」「潜水服は蝶の夢を見る」「ゴースト・ドッグ」では本作とは全然違う感じの役で出演していました。寡黙で渋い今回のような役は珍しいのではないでしょうか。

クレオール人

最初に意味深な言葉をいくつか投げかける不思議な人。アレックス・デスカスが演じます。
コーヒー&シガレッツ」ではイザック・ド・バンコレとコンビで出演。

フランス人

ジャン=フランソワ・ステヴナンは「パッション」「ジェヴォーダンの獣」などに出演されています。

ヴァイオリン

どことなくおどおどとヴァイオリンを抱えて登場するスペイン人ルイス・トサルです。実は男前です。「マイアミ・バイス」や「プリズン211」に出演されています。

ヌード

出ましたヌード。いいですねえ。ヌード。「私のお尻好き?」ええ好きですとも。変なレインコートを着たりします。「このレインコート好き?」ここで「孤独な男」が 「イエス」というのは意外でした。そういうところが面白いですよね。パス・デ・ラ・ウエルタが身体を張って熱演。ギャスパー・ノエの「エンター・ザ・ボイド」に出演です。あぁぁ「エンター・ザ・ボイド」に出てますか。上映期間中に行けなくて悔し哀しき「エンター・ザ・ボイド」でした。DVDもうすぐ出ますよね。

ブロンド

かっこよく美しく颯爽と登場するのはティルダ・スウィントン。えっ。「バーン・アフター・リーディング」のあの人ですか。「ブロークン・フラワーズ」「バニラ・スカイ」にも出ておられました。ベテランの有名女優さんです。「カラヴァッジオ」がデビュー作でしたか。「カラヴァッジオ」はその昔大阪の三越劇場という劇場で観まして、あの劇場も懐かしいなあ。

モレキュール

分子という意味だそうです。工藤夕貴が分子について語ります。いい感じですよ。

ギター

出ましたジョン・ハート。いつまでもエイリアンに食いちぎられる男のイメージではありません。もう立派なおじさんです。「ルワンダの涙」では温厚で意志の強い牧師さんを演じきりました。この人は真面目な俳優で、脚本や監督に余計な口出しをせず、オーケストラの演奏家のように脚本や監督の指示に忠実に、そしてその中で最高の仕事ができることを志しているのだそうです。

メキシコ人

はい。世の大きなお姉さんたちを虜にしたガエル・ガルシア・ベルナル君です。彼もいつまでも「天国の口、終わりの楽園」ではありません。「ルド and クルシ」は相変わらずでしたが、今回のメキシコ人役も・・・やはり相変わらずな役どころでしたね。面白い人です。

ドライバー

個性的で綺麗なイスラエル出身の女優ヒアム・アッバス姐さん。一度見たら記憶に焼き付く系の女優で「扉をたたく人」「パラダイス・ナウ」で印象深い役をされていました。

アメリカ人

ビル・マーレイです。「ブロークン・フラワーズ」「ダージリン急行」ですね。というか元ゴースト・バスターズですけど。レッツゴーのじゅんちゃんにどことなく似ています・・・今時の感覚じゃないですね

コードネームを持たずにクレジットされいるのはあの面白いウェイターを演じたオスカル・ハエナダです。それとも彼はコードネーム「ウェイター」なのか。

珍しくキャストを総ざらえしてしまいました。

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コメント - “リミッツ・オブ・コントロール” への3件の返信

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