1986年、アキ・カウリスマキ29歳の時の初期作品。
労働者三部作と言われている最初の作品です。
「パラダイスの夕暮れ」「真夜中の虹」「マッチ工場の少女」の三作がその三部作のようです。
マッティ・ペロンパーとカティ・オウティネンのカウリスマキ映画代表格の二人が、この初期作品で主人公にしてラブ・ロマンスを演じるという、後になって見れば感慨ひとしおの記念碑的作品となっております。
マッティ・ペロンパーの味わいはこの作品の時点でとっくに炸裂しておりまして、とぼけた可笑しさや妙な気障っぷりの根っこを十分に堪能できます。
セリフの妙技も、間合いも、音楽の使い方も、この後の作品の全てに通じるアキ・カウリスマキ節がすでに映画全体を包み込んでいます。
後々の作品と比べて、感情的で激しいシーンも垣間見ることができて、そういう部分はちょっと珍しい感じを受けたりします。
マッティ・ペロンパーとカティ・オウティネン、二人ともやはりまだ若い。若くても老けている。いいですね。この作品が「マッチ工場の少女」より以前の作品であると聞くと、カティ・オウティネンの不可思議さもいっそう際だって見えるかもしれません。
さてお話ですが、冒頭はゴミ清掃人ニカンデルのお仕事風景から。しっかりとお仕事を捉えます。はたらくおじさん映画としてもイケてる冒頭です。
怪我をした手でスーパーのレジを通ると、レジ係イロナが手当をしてくれます。見つめ合う目と目。いいですね。いいです。
独立したいと思っている初老の同僚、刑務所で知り合ったとってもいい人のお友達、その奥さんなど、個性的な周囲の登場人物も目が離せません。
「トータル・カウリスマキDVD-OX」は6本セットで、
あっ。何だこりゃ。超プレミア価格!
iTunesではこういう作品こそ配信すべきです。しないだろうけど。
「三部作」について。
どうもよくわからないのですが、いろんな人がいろんな作品を「何たら三部作」と紹介しています。私混乱気味です。
初期三部作については以下の記述が見られました。
その1.「労働者三部作あるいは敗者三部作」として「パラダイスの夕暮れ」「真夜中の虹」「マッチ工場の少女」を紹介している人。
その2.「労働者三部作」として、上記作品を紹介している人。
その3.「敗者三部作」として、上記作品を紹介している人。
その3.「敗者三部作」として「真夜中の虹」「マッチ工場の少女」「コントラクト・キラー」を紹介している人。
最近の三部作もあります。作品は「浮き雲」「過去のない男」「街のあかり」の三作で、これを「敗者三部作」とする記述が多く見受けられます。
「社会不正義三部作」とする記述も拝見しました。
アキ・カウリスマキ自身の発言としてそれらが記述されていたりして、どれが何なのかよくわかりません。まあ、正直なところ何が何の三部作かどうかなどどうでもいいのですが、情報が錯綜していて居心地悪いです。アキさんに電話して訊いてみますか。
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