とってもかわいいオープニングです。DVDのパッケージもかわいい。
英語タイトルは「The Fearless Vampire Killers」「恐れ知らずのバンパイアキラー」ってところですが原題は「Tanz der Vampire」(ダンス・オブ・ヴァンパイア) だそうです。後にミュージカルとして制作するためだっただとか。
確かに、舞踏会シーンは圧巻です。あのシーンは今見ても全然色褪せない見事なシーンでした。
それと雪景色の美しいこと。こちらはオープニングから随所に出現。マット・ペイントの背景とも相まってその美しさは格別。
ホラーでコメディですから、間合いやギャグにどうしてもある程度の古さは感じます。しかし67年当時、いろんな部分が斬新であっただろう事は容易に想像できますし、今見ても面白い部分がまだまだあります。これは流石。乗りに乗っている頃のこの監督、いつもこれまでなかったような新しいジャンルを開拓したり発想力がずば抜けていたりしていました。
特典映像の映画宣伝用短編フィルムも民族ネタを絡ませたりして、かなりレベル高いですよね。モンティ・パイソン以前であることを考慮すると、捻くれたコメディやギャグのセンスがいかに新しかったか実感できるかもしれません。
この映画はロマン・ポランスキーの5作目の作品で、いくつかの貴重な要素も含まれます。
主要登場人物である博士の弟子アルフレッドがロマン・ポランスキーご本人です。ユダヤっ鼻のあの若造が監督とは。若いです。
ヒロインの宿屋の娘サラを演じるのがシャロン・テート。「吸血鬼」の後、この二人は結婚するんですねえ。
そしてヒューストンに居を構え、69年のあの悲劇に見舞われます。
それを踏まえて観るとこの映画、笑うに笑えない状態になってしまいますので事件のことは知らないほうがコメディ映画として楽しめます。
でも有名な事件なので書いてしまいますと、チャールズ・マンソン率いるカルト教団による惨殺事件ですね。殺されたとき、シャロン・テートは妊娠8ヶ月だったとか。あまりにも辛い事件。あまりにも無残。
監督、アメリカに対しては当然のこと、人生に絶望しまくったかもしれません。
何たる気の毒な!
とは言えその後も精力的に仕事を続け、ジャック・ニコルソン邸での例の事件(少女に対する淫行容疑)で有罪判決を受け、服役中に国外逃亡して以来アメリカには二度と立ち入ることがないまま2002年「戦場のピアニスト」で久しぶりに喝采を受けました。
エイドリアン・ブロディ演じるピアニストが飄々と戦時を生き抜いたけったいな映画でしたね。監督の体験も元にした渾身の作ですが、観ていると飄々としか思えないんですよ。これって、もしかして体験が強烈すぎて作品化したときに防衛機能が働いてこのような飄々淡々としたものになるのかもしれませんね。ぬくぬくと育った我々には想像も出来ないことです。
2009年、スイスで拘束されるというリニュースが入ったのは記憶に新しいところ。チューリッヒ映画祭の「生涯功労賞」授与式での滞在中でした。アメリカは身柄引き渡しを求めましたが多くの関係者の応援もあってスイスが引き渡しを拒否、今年2010年の夏に釈放されました。
この監督がこれほど多くのアーティストたちや観客に愛される理由は何でしょう。そりゃ、もう大きな理由の一つは作品の力でしょうね。
常識的倫理観なんてのは人を測る項目のうちの僅か一つに過ぎません。
このサイトで頻出するワード、「社会不適応者と犯罪者と芸術家はまったく同じタイプである」というのをまさに身を挺して実践しているかのごときロマン・ポランスキーさんです。
それはともかく雪景色と舞踏会は見物
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