公開当時、これには驚きました。今までありそうでなかった静かでリアルな暴力描写と痛みに、何やら新しい時代がやってきたと思わず興奮したものです。
派手な映画と言えばアメリカ映画の真似しかできないような風潮の中、身の丈の冷静さと日常的なリアル感はヨーロッパ映画や古き良き日本の映画を彷彿とさせ、たいへん効果的な演出となっていました。
ビートたけしと言えば「戦場のメリークリスマス」のイメージでしたから(古いね)役者としての期待はありましたが、まさかの映画監督の才能にみんな驚いたんですね、当時。
で、これを何で今更書いてるかというと、これまた我が家の奥様が未見というので「それはいかん、観なければ」と随分久しぶりの鑑賞となりました。未見の奥様がいると再見の機会に恵まれ、幸せなのでございますね。
で、まあ正直言いますと、当時感じた新しさは今観たらさほどのものではありません。これはどういうことかというと、当時の新しさがずば抜けていたため、その後の映画に大きな影響を与え、その後の映画が普通に技法として使うようになって定着し、今ではごく当然のことになってしまったんですね。
例えば当時拳銃の音がそれまでのような大袈裟な「ばきゅーん!」 って音じゃなくてもうちょっとリアルだったんですが、その感じがすっかり定着して、どんどんリアルな音に進化していった今頃にこの映画を観ると、まだまだ大袈裟な音に感じるんですよ。殴る音なども同じですね。バイオレンスのリアルさもそうです。
さすがに時代を超えた作品とは言えないのでして、そのあたりは仕方ありませんね。
もちろん、製作年を無視して今の目線で作品を批評するなど許されざる行為ですから、これは作品を貶めているのでは決してありませんよ。ねんのため。
89年と言えばまだまだバブルで、そういう風俗や世相なんかは別の意味で今観たら面白いです。
2009.02.13