「可愛いちびっ子が観たい!」という馬鹿っぽい理由で選んで参りました本作「ポネット」は1996年の話題作。
ジャック・ドワイヨン監督に見出されたポネットを演じるヴィクトルワール・ティヴィソルはこの作品で史上最年少ヴェネツィア国際映画祭主演女優賞を受賞したという、恐るべき子役でございますね。
まあ観てみれば一目瞭然、どうやってこんな子供がこんな自然な演技を出来るのか、もう手品を見ているようです。
長回しも多用されていて、その中で子どもたちが自然に演技する姿は驚異以外の何ものでもありません。
この映画は、母親の死を受け入れられない少女の偏執狂的振る舞いをしつこく描く映画でして、押しつけがましく涙を誘ったり感動させたりと言うことはないのですが、少女の不憫さを強調しすぎていてちょっとあざといという感じはあります。
だから子供の感動モノと思って挑むとどう見ていいのか混乱するような映画なのですが、それよりなにより、子供たちの世界、子供たちの社交、子供たちのドラマ、これらが実は見どころになります。
この作品全編にわたってちびっ子たちがたくさん出てきて演技をするんですが、彼らが語る物語の内容たるや冷静な大人が見れば頭がおかしくなりそうな子供世界の支離滅裂なちびっ子ストーリー爆裂。
常に子供の目線で撮影されていて、物語のほとんどが子供たちだけで構成されています。そこで繰り広げられる会話やストーリーは実にリアル。子供同士って何でこんなんなの、と可笑しいやら可愛いやら怖いやらです。まさにちびっ子ならではの支離滅裂、論理破綻、持続皆無、虚言炸裂、刹那発想、拡大妄想が存分に楽しめます。
気が狂いそうですよ。
ちびっ子がいるご家庭なら、子どもの空想の突飛さ出鱈目さに笑い転げるやら疲れ果てるやらしておられると思いますが、まさにあれの連続です。
そんな子供たちの支離滅裂な会話が中心で、随所にポネットが不憫に悲しむシーンが現れ、実際のところ「で、どういうオチを付けてくれるのか」と心配になってくるんですが、最後のシークエンスはちょっと意外な展開を見せます。
それについて語りたい気持ちがあるんですがやはりそこは控えておきましょう。印象がぐっと上がったことだけお伝えしときます。
単なるお涙頂戴映画ではないということが確信できると思います。
ということで「よいしょ」と跨いで登場する力の抜けたマジックリアリズム系の役割を見事演じたマリー・トランティニャンという女優さんが誰かというと、これがまああなた、ジャン=ルイ・トランティニャンの娘さんなのでありますねえ。ジャン=ルイ・トランティニャンと言えば「男と女」や先日このサイトでも取り上げた「日曜日が待ち遠しい!」の不動産会社オーナー役のあの方です。
その娘であるマリー・トランティニャンはエキセントリックな変わり者の役を好んでやる女優だったらしいですね。カッコいいですね。
たいへん残念なことに2003年にロックミュージシャン(ベルトラン・カンタ)の彼氏と喧嘩して突き飛ばされて死亡されています。wiki見てびっくり。波瀾万丈の生涯でありました。
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