「隣の女」でファニー・アルダンが拳銃を忍ばせて夜道を歩くシーンを見て「次は彼女のためにミステリ映画を作ろう」と思い立ったとwikiに書いてありました。
その通りに、これはファニー・アルダンのためのアイドルコミカルミステリサスペンスとなっております。
フランスは愛の国、愛に寛容で愛のなせる罪にも寛容です。それを公言して憚らないひねくれ者の国でもあります。
この作品にもそれが如実に表れています。如実どころか、たしかセリフの中にも明確に「愛の事件には寛容だ」とあります。
このセリフを聞いたときはたまげました。そしてカッコいい!と思いましたね。
さて物語は殺人事件の容疑者になってしまう不動産屋のオーナーを救うために女性秘書が名探偵となって奔走するお話。軽妙でコミカルなミステリ仕立てです。
ヒッチコックめいた雰囲気やフィルム・ノワール的な映像を交えて、ファニー・アルダンの魅力を出し切ります。
オープニング、軽やかな音楽に乗せて街を闊歩するシーンはほんとに名場面です。
不動産会社社長ジャン=ルイ・トランティニャンのすっとぼけた雰囲気も面白いし、気の抜けたサスペンス展開もいい。
遺作がこれだとは、最後まで洒落た監督でございました。
first appearance 2010.01.15