何となく観てみた一本。
感染系だからして、ゾンビものかホラーかと思いきや全然違っていました。
世界を滅ぼしたウィルスは致死率100%であってゾンビになるウィルスではなかったんですね。
では何をしているかというと、生きるためのサバイバルをしているのですが、実質サバイバルというよりドライブ旅行です。
馬鹿でワイルドな兄、優しくて弱い弟、兄の彼女、弟が見つけた女の子の同世代4人で楽しくドライブしています。
世界が滅んでいようがいまいがあまり変わらない景色のアメリカの荒野を走り抜け、メキシコ湾を目指してるんですね。
なぜ目指してるかというと、多分、海辺でごろごろしながらウィルスが自然消滅するのを待つという、言わば消極的解決を期待しているからです。リゾート・サバイバルというべき、なかなか楽しそうな計画です。
さて若さみなぎる監督たちがこの映画で何か新しい境地を開拓したでしょうか。
実はしたのです。これは「感染系青春ロードムービー」です。新しいジャンルですね。
荒野を走る普通のロードムービーですが、普通と違うのは旅先で出会い通り過ぎていくのが死んだ人やこれから死ぬ人や妙な人たちという点です。
途中まではロードムービーっぽくなくてそこそこ楽しめるんですが、途中のある展開で「あ、単なる”通り過ぎる人々”のうちの一つか・・・」と思うシーンがあって、ロードムービー感が強調されることになります。
感染系ロードムービー。うん。ちょっと変わっていていいじゃありませんか。
意外だったのは、若い監督が若い俳優を使って若々しい映画を撮っていると思いきや、そのテーマが年寄り臭い点です。
ロードムービーを指してるのではありません。なんと中心のテーマがノスタルジーなのです。
映画の冒頭は古い8mmフィルム。エンディングも同じような古いフィルムの質感で、主人公兄弟の「若かりし頃」の懐かしい映像を流します。
子供のころ、それに青年の頃の映像を痛んだフィルムエフェクトでノスタルジックに・・・おい、ちょっと待て。どう見ても主人公の兄ちゃんたちまだ若造だろうが。若者が若い頃を懐かしんでますよ。なんだこれは。何事だ。
と、そういうわけでこの映画は、同世代の若い子たちが貧弱なイメージの “滅んだ世界” を通して懐かしんだり傷ついたりするという、学芸会的でとてもくだらない作品でした。
もうちょっと設定を詰めたり、人物をきちんと描いたり、リアリティのある脚本や演出ができていれば、それなりに哀愁漂う良い映画になったと思うのですが、ちょっと惜しかったですね(とても優しい見方)
【追記】
と、ここに来て思い出した。感染ロードムービーが新しいジャンルとは馬鹿なことを書いたもんです。ダニー・ボイル「28日後…」があるではないか。
「28日後…」はこの作品と違い、稚拙さも想像力の貧弱さもなく、見事なまでに完成度の高いゾンビ・ロードムービーでした。
あまりの格の違いに、思い出せなかったんですね。
さらに追記。
何事にも長所の一つくらいあります。この映画、エンドクレジットで流れる気だるい唄がけっこう好みでした。