変な邦題なのでもっともっと低予算の出来損ない映画かと思ったらこれが意外とちゃんとしていて掘り出し物。
変な邦題はなかなかギャンブルです。「変態村」みたいな傑作にも出会えるし「嬲られる女」みたいな駄作にも出会えてしまいます。
「26世紀青年」はどちらかというと大当たり。もちろん期待しすぎてはいけませんが、軽薄な邦題がちょっと勿体ないくらいの出来映えです。とても良いです。
原題は IDEOCRACY、イデオット(馬鹿、間抜け)とクラシー(社会、政治)を足した造語だそうです。
さて、500年後に目覚めた主人公、彼は絵に描いたような平均人間で超普通の無個性人間ですが、目覚めた未来世界の人間はすべて阿呆ばかり、その中で世界一IQが高い天才となってしまいます。
未来は、ものを考えず企業の言いなりでジャンクフードと大量消費と下ネタだけで出来ている阿呆社会で、現代アメリカ(や日本)をそのままカリカチュアライズした世界となっています。この未来の馬鹿の描き方がなかなか悪くない。イギリスやヨーロッパの映画なら多分もっと凄い馬鹿を登場させるでしょうが、このアメリカ映画はアメリカ映画らしく、馬鹿の描き方そのものもアメリカ的に馬鹿っぽいんです。そういう部分がちょっとかわいいです。例えば未来の米国大統領は黒人の元プロレスラーでその名もカマチョ。このラテン名の使い方とか、かなりツボをわきまえてます。
観る前はつまらない映画かと思っていたので、思いのほかよく練られたギャグバランスに感心しました。汚い未来アメリカのCG風景も退廃的な雰囲気がよく描かれていて、こちらもちゃんとしています。
うーむ。この映画、かなり好きかも。
巷では「ウォーリー」が本作をパクった!とか言われたりしてそうですが、確かによく似てますね。でもSFの定番設定なのであんまりパクリパクリ言うのもどうかな、と。
馬鹿でゴミだらけの未来社会を見ながら「未来は、ほんとうにこんな馬鹿な社会になるかも」と感想を持つ方もおられるかもしれません。しかしそうではありません。いいですか、今すでにそうなのです。
現代もこの映画の未来社会も基本的にあまり違いはありません。だからこそ笑いが共有できるんですね。SFってのはそういうもんですよね。
追記2016年11月。
今は2016年秋ですが、アメリカで大統領選挙があってトランプという男が当選したのでふとこの映画を思い出しました。
この映画のプロレスラー大統領に立場的にも意味的にも近いトランプ大統領の誕生に世間は騒いでいますが、日本では橋下が大阪で圧勝したり石原慎太郎が東京で支持率高かったりそもそも小泉純一郎や安倍晋三が日本人に高支持率だったりすでにそんな状況下にあるので手遅れ感においては同じ現象です。というか、アメリカでもすでにレーガンやブッシュがいて不可逆的なトンデモ政策で世界を歪めたのは記憶にあたらしいところ。
てなことで「26世紀青年」をふと思い出したというトランプ記念の追記でした。