ポイズン あるスキャンダルの秘密

State Like Sleep
夫の自殺が引っかかり真相を究明しようとベルギーに滞在するも実際には何もせず変態世界へ足を踏み入れる変な未亡人の青春白書「ポイズン あるスキャンダルの秘密」です。1991年の映画「ポイズン」とは関係ありません。
ポイズン あるスキャンダルの秘密

ブログの更新を辞めてしまってからも良い映画を山盛り観てましてね、事あるごとに「感想書けや」と言われ「感想書きたいなー」と言い、映画のタイトルだけが下書き欄に溜まり続けるのを見て神経をすり減らしております社会脱落派のMovieboo筆者でございます。春先からのイベントが悪政晋ちゃんと厄災晋コロのせいでことごとく中止に追い込まれ、名演奏をお伝えすることもできませんし、わけのわからないブラック仕事を請け負ってしまい莫大な損失を計上して良い作品をお披露目することもできず、発散の場であったmoviebooはgoogleの差別的たばこ規制の影響もあってお客さん激減でもうほんとどうにかなんないですかねという、おっと愚痴を言うための枕じゃありませんで、何を言おうとしたのかというと最近観た良い映画のネタはたくさんあるのに何でまたこの映画を紹介すんのという自虐に満ちた「ポイズン あるスキャンダルの秘密」についての枕です。

良い映画を観たら「良かったなー」「おもろかったなー」「素晴らしかったなー」という感想以上のものがなかなか出てきません。だから良い映画を立て続けに観ると更新が途絶えるというのは、活発に書いていた頃からそうでした。

それに引き替えさほど出来の良くない映画を観たときったら、見終わっても話が尽きないし貶すことも含めてすらすらと筆が滑り饒舌文体になります。どういうところが悪かったのか、どうダメなのか、何が間違いなのか、そういうことにも目が向いて、そのおかげで逆に良い映画が如何によくできているかということをロジカルに再認識できたりするわけです。

というわけで、このだらだらした枕は久しぶりのハズレ映画「ポイズン あるスキャンダルの秘密」についての枕でありまして、枕なのにすでにこの饒舌、本番始まったらどうなんのともうすでに読んでるあなたも呆れ顔。ではいきます。

「ポイズン あるスキャンダルの秘密」はこんな映画

まずこの映画が何なのかというと、夫の死を探る妻の話です。冒頭で夫が自殺し、その謎について未亡人が嗅ぎ廻ります。

ですので、ミステリーを含むスリラー・サスペンス劇場の映画だと思い込んでいました。でもまったく違いました。

スリラーじゃなかったら何なのか。それは、ジャンルで言うと・・・一番近いのは青春映画かな。でも青春って年頃の人の話じゃないし、夫を失った妻の心理劇・・・いや、心理はぜんぜんないし、そうですね、既存ジャンルでいうと「ドラマ」ですね。Moviebooによるジャンル判断では「うじうじ系」です。

うじうじ系

Movieboo筆者はありとあらゆる映画が大好きですがあまり好まないジャンルもあります。その筆頭がうじうじ系です。単にうじうじした男または女がうじうじ、うじうじとする映画です。もう辛気くさくって面白くなくて見てられません。そういう映画を表するとき、言葉の節々に悪意が籠もります。そういう主人公をこれまで「うじうじうじ男」「うじうじうじ子」と呼んできました。うじうじが名字で名前がうじ男、うじ子です。そこまで解説しなくてよろしい。はい。で、「ポイズン 以下略」の主人公は、他のうじうじ系の映画ほどにはうじうじしていません。でもうじうじはしています。そして、うじうじしていない時は無表情というか固定された表情で出続けます。どのシーンも基本同じ顔していて演技をちゃんとする気がありません。この映画しか知らなければ演技のできない女優と決めつけていたと思います。

アウトの個人的理由

さてこの映画の何がアウトか。アウトにもいろいろありますがまずは単なる個人的な趣味のレベルで行きます。個人の好みの問題ですから普遍性はないと思いますし気になさらないでください。

髪型がアウトです。

この映画では夫生前の過去を回想するシーンと夫の死後である現在のシーンが交互に出てきたりします。以前は髪が長く、現在は短いのです。その両方について、私は個人的にまったく受け付けられないヘアスタイルでした。普段人様の髪型なんぞに興味持ったこともないのに「何だこの髪型は」と思ってしまいました。すいません。趣味が合いませんでした。

洋服もアウトです。

もうひとつファッションにも疎い上に興味もなく、普段映画を観ていて洋服にはほとんど注目してきませんでした。珍しいことに、この映画を観ながら「何だこの服のセンスは」と何度も思ってしまいました。完全に趣味が合いませんでした。すいません。

以上が個人の趣味のレベルでの反応です。ここからは映画技術についてケチをつけますが、まずは髪型をもう一度登場させます。

髪型

主人公女性の髪型の変化が何のためにあるかというと、シナリオ的必然よりも、過去のシーンであるか現在のシーンであるかを観客にわかりやすく伝えるためと判断できます。髪が長ければ「過去のシーンだな」短ければ「今だな」とわかりますね。わかりやすく伝える良い映画技術でしょうか。違います。

髪型でも時系列を説明すること自体は悪いことではありません。映画の技術のひとつです。でも問題は時系列の区別を髪型だけに頼り切っていることです。演技や演出やその他の要素や細やかなる技術で時間の経過あるいは時系列の違いを表現できていません。髪型を変えて示す以外にないのです。実際、もし髪型が同じだったら過去シーンと現在シーンの違いに誰も気づかないレベルで顔つきから演技から空間の捉え方からすべて同じです。

この人、何したはんの

大半がうじうじうじ子ちゃんのうじうじポエムシーン。でも他の登場人物も比較的うじうじしています。マイケル・シャノンにだけは期待したのに、演技力だけでは下手なシナリオや演出を補いきれません。仕事選んでください、あなたが出るからというだけの理由で見る人もいるんです。

演出や創意工夫で時間を表現したり、ましてや人物の造型を行うことにことごとく失敗していて、登場人物たちの行動を見ながら、まったくその意味や意図や目的や気持ちを汲めません。始終「この人、何したはんの」と素朴な疑問がふわふわと浮かんでいました。

プロット

さてシナリオのうちプロットについてですが、これがまあ何というか、あれです。夫の死を探る話ですからミステリー的な期待を持つわけですけど、最後まで見たら何というふにゃふにゃしたお話だったのかと、ちょっと驚愕します。ふにゃふにゃしすぎて「この人、何したはんの」感が最後まで消えぬままで「この映画、何すか?」となります。

全員の動機がすべて弱すぎるんですよねえ。映画スターが木陰で女性と立ち話してる写真だけが「スキャンダル」「離婚」と繋がるとか、いきなりマイケル・シャノンと恋に落ちてふわふわラブロマンスになるとか、無意味な登場人物とか、ちょっと困ったなというプロットになっています。

映画で怪しげなクラブが出てくるシーンってよくあります。大抵は何だかちょっとアホみたいな雰囲気だけの悪徳なクラブですよね。この映画でもそういうクラブが出てきますけど、まあそこいらのアホみたいなクラブシーンを物ともしないアホくささです。

と、いろいろ貶していってもキリがないのですけど、全体には残念系であったという以外にない見事な残念系映画です。

この映画の真のシナリオ 徹底解説

でもここで終わればただの貶すことしか出来ぬ評論家もどきの間抜けな映画レビューブログです。ここからMovieBooならではの妄想世界が始まります。

この映画の中で「?」が浮かぶシーンがたくさんあります。よく考察するとその「?」は出来損ない故の「?」と、シナリオ上の「?」の2種類あることが判ります。

つまり「お母ちゃん何のために出演したん。ああそうかベルギーに滞在する設定のためか」「髪型の変化は演出で時間を表現できないから以外になんか理由あるん?」「お姉ちゃんは電話出演だけど面倒だったから?」とか「マイケル・シャノンとの絡み何なんキモいんですけど」とか、そういうのは映画の出来映え系の話なのでもういいとして、問題はシナリオ上の不思議シーンです。これらを解明すると映画の全てが見えてきます。

まず筆頭に上がるのが「主人公は何したはんの?」これです。「何で木陰で立ち話している写真がスキャンダルなん?」これとも繋がります。「シャンプー男のシーンは何ですか?」ここ最重要です。「盗撮は?」そうですね、これとも繋がります。

なぜ未亡人青春うじうじラブロマンス乙女映画か

面倒なので結論いきます。この映画、演出、編集、シナリオ、それらはミステリーやスリラーじゃなくて主人公の心のうじうじかつポエミーを中心とする乙女心みたいな映画として仕上がっています。

ところが裏のシナリオがあります。裏のシナリオとは、映画探偵Moviebooの妄想推理によりますと、元々のシナリオです。この映画には元々のシナリオもしくは原作があり、そのシナリオなり原作がプロデューサーの手に渡ったときに「ちょっといいアイデアも入っとるな。いろいろ変えて未亡人青春うじうじラブロマンス乙女映画として作り直したらイケるんじゃないか」と判断、元のシナリオまたは原作を新しく雇った脚本家に命じてふわふわ物語に変更させました。

こうして、意味的に整合性の取れない「ポイズン以下略」が完成しました。これが結論です。

変態未亡人の変態日記

では元のシナリオとはどういうものだったか。ズバリ、それは変態未亡人の変態日記です。

主人公は変態かつ気違いです。映画スターの夫に対して異常な嫉妬心を持っております。女性と木陰で立ち話する夫の写真を見て怒り狂い、離婚じゃ離婚じゃと騒ぎ立てます。そういう女です。

夫は妻の気違いっぷりに耐えかねて自殺。でも自殺とスキャンダルを妄想で結びつける妻はベルギーで嗅ぎ廻り、おかしなクラブに出入りします。

変態ですからクラブに入り浸りちゃっかりそこの人間になります。だから次々に男性客の接待もいたします。変態シャンプー男とのエピソードはそのひとつで、実際はこれ以外にも売春婦として大活躍していたことが想像出来ます。この未亡人は、夫の死を探るためだと自分に言い聞かせながら闇雲に背徳世界に溺れます。

未亡人は元々変態で、その証拠に趣味は盗撮です。わけもなく盗撮を繰り返す犯罪者でもありまして、それは映画本編でもきちんと表現されていましたよね。

マイケル・シャノンとのラブロマンスもその延長線上にあります。映画的にまるで本当のラブロマンスみたいに木洩れ日の演出まで施して気色悪い限りですが、闇のシナリオでは盗撮したあげくにいきなり部屋に押しかけて「私とセックスする?」とか言ってほんとうにするというそういう話にすぎません。

そうこう考えると明らかなように、闇シナリオ、否、真シナリオによりますとこの映画は本来頭のおかしい女が夫の死の理由を探りたいというまともっぽい言い訳しながら実際は己の欲望と狂気の赴くままに背徳世界に溺れるだけの話であるとガッテンできます。

この映画の完成度を妄想で高めてみましょう。すでにとても良いお手本があります。狂人がミステリーをネタに己の妄想世界をうろちょろする映画がありました。もうお分かりですね(わかんねえよ)その通りです。それは「サンセット」です(ここで「おお」という読者のうめき声)

サンセット

何と、ただのうじうじポエミー残念系の「ポイズン」が描いていたことは、完全に実力不足の「サンセット」であったという真実がここに明らかになりました。

夫の死について探偵ばりにウロチョロする女性、その女性の精神的崩壊、すべてが「サンセット」の劣化コピーです。劣化でも志は高いんです。それは素晴らしいことです。

そう思うとこの映画、とても良い映画だったんじゃないかと思えて・・・きませんね。無理ありました。

 

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